「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和2年(2020)7月14日(火曜日)
通巻第6587号
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カンボジアの独裁者フンセン王朝の後継者は長男のフン・マネット
米国はひそかに期待。米国ウェストポイント卒、経済学博士のインテリ
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カンボジアのフンセン首相は「中国の代理人」。その独裁権力は中国からの強大な投資を呼び込み、経済成長が著しく、プノンペンは高層ビルが林立する大都会に変貌した。たしかに、これが「功績」であるとすれば、多くの国民は事実上のフンセン王朝を支持する(カンボジアは立憲君主国なので、この表現はふさわしくないが、わかりやすくするためにフンセン王朝とする)。
カンボジアは「あっち(チャイナ)へ行ってしまった」と考えられるのも、南シナ海の領海問題では、アセアンで非難決議を引っ込めるなど、中国のために尽くしてきたからだ。
コロナ騒ぎの二月にフンセンは北京に「挨拶」に行った。息子のマネットをともなっての朝貢である。北京の反応はすこぶる良かったらしい、ほぼ後継者として中国のお墨付きを得たとフンセンが考えた。朝貢外交の成果はあったと総括したらしい。
一方で、フンセンは米国へ恩を売る行為にでた。
クルーズ船「ウエステダム号」のシアヌークビル港への寄港を認め、感染者を収容し、乗客をそれぞれの国に送り出した。
当該船の船籍が米国であったため、トランプ大統領はフンセンに感謝の言葉を送った。11月には、トランプがフンセンに「米国は体制変革を望んではいない」という書簡を出しているという。
米国が期待するのは、フンセンの長男、フン・マネットである。なぜなら彼は米国ウェストポイント(陸軍士官学校)を卒業した後、ニューヨーク大学で経済学修士号を取得し、その後、英国ブリストル大学で博士号。英語は流暢なうえ国際情勢に通じているからだ。
経済政策、リベラルな思想を身につけカンボジアに帰国した。
こうして経歴から、今後のカンボジアの民主化、経済政策の資本主義化を担うに違いないと期待している(アジアタイムズ、7月13日)。
もし、この観測が正しいとすればフンセンは中国の代理人の役を果たしながらも恒に米国と接触し、弐国間のバランス外交を展開してきたことになる。
フン・マネットはすでにカンボジア陸軍のトップであり、独裁執権党の「人民党」の要職を幾つか兼務して権力中枢にある。軍の各部隊の根回しにも積極的で、軍と党の両方で確実に影響力を拡大し、確乎たる位置を確保してきた。
また2017年以来、中国の反対で行われていない米軍との協同軍事演習の再開に前向きと言われ、米国は長男が継承すれば、政治経済改革の期待が高まるだろうと考えている。
それゆえ、米国議会は上程していたカンボジア制裁案を静かに引っ込めていた。
1985年以来、35年カンボジアに君臨するフンセンは67歳、マネット43歳。カンボジアの次の総選挙は2023年である(でもマネットって、日本語で書くと「真似人」となるのが気になるが(苦笑)。。
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カンボジアも他の東南アジアと同じ。戦士戦国独裁時代。ソフトな独裁(タイ)か又はハードな独裁(北朝鮮・中共)かの違い。歴史の流れは変えられない。
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