宮崎正弘の国際情勢解題」
令和2年(2020)7月11日(土曜日)
通巻第6579号 <前日発行>
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米国、ふたたびレアアースに危機感。このままでは中国にやられる
ペンタゴン、次期戦略兵器に欠かせないレアアースの確保を
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米国が最終的な中国制裁に踏み切れない理由のひとつはレアアースである。
スマホ、電池、ミサイルの翼、F35ジェット戦闘機。永久磁石、MRIスキャナーなどに不可欠なレアアース、世界の78%を中国が生産する。ちなみに米国務省は7月9日、日本へF35 x 105機の輸出を認めた(総額2・5兆円)。
2010年に中国が対日制裁にでて、レアアース禁輸措置を講じたとき、日本企業は悲鳴を挙げた。
想定外のアキレス腱を衝かれたからだ。爾来、日本はカザフスタンなどに供給源の多角化をはかるとともに昭和電工などは一部工場を中国に移転して、急場を凌いだ。
レアアースの危機を訴えて法案を提出したのは、テッド・クルーズ上院議員(共和、テキサス州)で「このレアアース類十七品目の確保は、産業発展という文脈だけではなく、国家安全保証上、きわめて重要だ。わたしたちは覚醒しなければならない」と提案理由を説明している。
資源リッチの米国でもレアアース、じつは大量な埋蔵が確認されている。
1990年代まで、米国が世界一のレアアース生産を誇ったのだ。スマホの本格登場以前である。
レアアースの鉱脈から製品に精錬するには、毒性の強い鉱石から、塵芥、集塵のなかという劣悪な職場環境が随伴するため、「汚い作業は中国に任せればよい」とばかりに開発を怠ってきた。そのうえ、マウントパスという鉱山会社がカリフォルニアにあるが、中国との価格競争に耐えきれず、2015年に倒産、買収に乗り込んできたのが中国ファンドだった。買収金額は2050万ドルが提示された。
2017年に米国当局は中国企業の買収を脚下し、MPマテリアル社が経営することになった。だがいまなお、9・9%の株式は中国のファンドが所有している。精錬方法などの特許はこのマウントパスが所有しているためだ。
▼中国のレアアースの本場は内蒙古自治区と江西省
ほかに全米ではテキサス州で、米・豪・マレーシア合弁の企業がパイロット工場をもち、またアラスカとワイオミング州でも鉱脈は見つかっている。開発費用が膨大なため、まったくの手つかずである。
テッド・クルーズ上院議員は、ペンタゴン予算に、これらの鉱山開発費用を含め、国家事業とするべきだと主張している。
専門家のポール・ヘインレ(カーネギー財団主任研究員、元国家安全保障局中国担当主任)は「中国の現況に米国が追いつくには、鉱山開発やパイロットプラント建設など十年の月日を要する。もっかのところ、このゲームでの中国の優位は不動だ」と言っている。
もし中国が米国の発動する経済制裁あら在米資産凍結という挙に出たら、中国は間違いなく、このレアアースの対米供給をやめるという報復手段に出るだろう。
中国のレアアースの本場は内蒙古字軸のパオトウ(包む頭)だ。
市内の東部と西部を結ぶ州道の中間に位置する「ジンギスカーン稀少金属公園」にレアアース工業団地がある。また江西省の山岳地帯でもレアアース鉱山があるが、ここでは毒性の強い溶解液を、直接、岩盤に流し込むという乱暴は採掘方法がとられているため、地下水が汚染され付近の住民に正体不明の奇病が発生しているという。
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戦いに資金を惜しんではいけない。資金をつぎ込めば・失業も良くなる。どうせ資金は・帳簿の数字又は印刷物である。創るのは簡単。
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