「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和二年(2020)4月10日(金曜日)弐
通巻6443号
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
世界は恐慌前夜。IMFは「百年で最悪」と警告
日本の第二四半期GDPは二桁のマイナスになるだろう
***************************************
IMFのクリスタリナ・ゲオルギエワ専務理事は武漢コロナ・パンデミックが引き起こしている経済危機は「過去百年で最悪」なものになるとした(4月9日)。
現に恐慌寸前の状況が中国と欧米諸国。アメリカの失業保険申請は過去三週間だけで1700万人。生産現場は殆どが止まり、トヨタもGMも日産もホンダもレイオフ。ボーイングは倒産の危機にある。
世界株式市場では時価総額が1週間で約7兆2000億ドル(約783兆円)目減りした。MSCIの全世界株指数は前週に12%も下落しており、2週連続で2桁の下落ぶり。たくましく株価を上昇させているのはマスク、医療機器、人工呼吸器、検査機器のメーカーだけ。
「りそな総合研究所」のシミュレーションでは全国の消費がおよそ4兆9千億円減少すると予測、とくに人の移動の減少により、宿泊、交通機関、レストラン、くわえて衣服などが打撃を受け、関東と関西で85%、九州・沖縄で75%、それ以外の地域で70%減るとした。
トヨタは1兆円の資金枠を要請、ANAは3000億円。ほかの大企業も右に同じ。ユニクロのファストリティリングは営業予測を1000億円下方修正、居酒屋チェーンも営業自粛、中国でドル箱だった資生堂も2割減少。どこもかしこも真っ青である。
三日前にタクシーに乗ると「70%減です」と客の激減ぶりを嘆いた。もし30万円の月給だとすれば、10万円? 喫茶店のアルバイト並である。
実際に国際線は90%運休だが、国内線も大幅な減便、ホテルはいずこも閑古鳥、ビジネスホテルの一部は閉鎖したし、一部は臨時病院施設転用となっている。同研究所は日本の第二四半期のGDPは10.8%のマイナスとなるとしているが、マイナス20%でも不思議ではなく、この不況は長引くだろう。
昨年上梓した拙著の題名(田村秀男氏と共著)は、『中国発金融恐慌に備えよ』(徳間書店)だった。この本は韓国語訳もでたが、あたってはいけない予測が的中してしまった。
□◇み◎○△□や○△□◇ざ◎○△□き△□◇◎
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
● そもそも、前回の世界恐慌とは、環境が全く異なります。
❶ 金融緩和の規模が全く異なる。
❷ 生産力が全く異なる。
❸ 国際協調がまだ出来る。
❹ 気構えが異なる。
● 以下で説明します。
❶ 金融緩和の規模が全く異なる。
前回は株式市場が崩壊したとき、時の政権は自助努力、又は
自己責任論が強くて、株式市場に対する介入は全くありません
でした。その為に、その時の株価を見ればわかりますが、
減衰振動(=トライアングル)しています。つまり、外部から
全く入力がないときの、弦の減衰振動と全く同じように、
動いています。
1929年から1949年までのUSA株価の動きの事です。
つまり調整期間は20年です。その前の上昇期=バブル期は約10年です。
合計30年でバブルと崩壊が起こっています。➡1サイクル≒30年説。
それを後世のFRB議長のベン・バーナンキは2000年から恐慌になると
予想して、膨大な予防金融緩和をしたのです。その結果が2000年から
の調整波=拡大型トライアングルです。現在はDとEの間です。
ヘリコプター・ベンの物語です。
4波で出る減衰振動=トライアングルに介入して、減衰するたびに
膨大な金融緩和をしたのです。これが拡大型トライアングルを
もたらし同時に貧富の差を広げたのです。
今回も世界同時の大金融緩和をしています。世界恐慌を心配して
いるのです。従って来年から直ちに株価は上昇してバブルを
作ります。余ったお金が市場に流れるからです。空前の
大ばくちが始まるのです。同時に貧富の差は拡大します。
そして庶民は耐えられなくなります。最後のバブルなのです。
❷ 製造業もお金さえあれば、世界中どこでも物が作れる、グローバリ
ゼーションの世界です。モノが不足することは一時的な現象です。
お金さえあれば、供給力は余っていますから、ロボットが大活躍
する時代です。お金さえ保証すればいくらでも作れます。
❸ グローバリゼーション=国際協調です。米中対立は始まりましたが
コロナの為に一時的に対立は変質しています。反グローバル化の
波は起こり始めていますが、本格的には10年後からでしょう。
トランプ氏の対中強硬政策は、まだまだ共通課題にはなっていません。
❹ 昔は、株は一部のお金持ちの道楽として、国家も関心はそれ程
ありませんでしたが、恐慌の結果として、反省が起こり、
暴落時は積極的に介入することにしたのです。
日本でも恐慌からいち早く復興したのは、高橋是清蔵相の
金融緩和であることはバーナンキも知っており、彼はそれを
2000年からの調整波に応用したのです。過剰に反応したために
余った金が、調整波なのに、空前のバブルを作ったのです。
しかし所詮金余りのバブルごっこでお金持ちだけが肥えたのです。
今回も空前の金融緩和と為替戦争が同時に始まりました。従って
恐慌になる理由はありません。前回の恐慌時の資本主義国家は
対立の時代でしたから、いとも簡単に覇権争いで第二次世界大戦
が起こったのです。今回は覇権国家どうしが、今戦争する理由は
ありませんし、その前提である、世界恐慌も来ないのです。
❺ ただし、持ち越された今回の世界恐慌は、その強度を何十倍にも
強化されて、10年後から株価大崩壊が本格的に起こります。
そして第三次世界大戦➡USA/大西洋資本主義諸国の大崩壊
➡西欧文明の大崩壊が始まるのです。
その一里塚が今の医療崩壊であり、グルテンフリー運動=
西洋農業の大崩壊なのです。