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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和二年(2020)4月10日(金曜日)
通巻6442号
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「スイスよ、中枢部品を増産してくれ」と王毅外相が要請
世界の医学界を揺らす医療設備、治療セット製造のアンバランス
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日本光電という企業がある。誰も知らない、投資家も軽視してきた地味なメーカーである。この会社、本社は東京文京区、主力工場は埼玉県だ。
年初来、三月半ばまで、この会社の株価は3000円から3500円の枠内をうろうろと、横ばい状況だった。
3月13日、トランプ大統領が国家非常事態を宣言した。突如、日本光電株の株価は唸りを上げて急上昇、一時は4500円の天井を抜くほどだった。その後は投資家の関心も薄れ、4000円を割り込んでの一進一退となっている。
なぜ? 日本では珍しいが、日本光電は「人工呼吸器」を製造しているのだ。
突発的需要は、もちろん武漢コロナが原因である。それまで日本には22254台の人工呼吸器があったが、このうちの13837台は使われていなかった。病院の予備設備として倉庫で保管されていた。そもそも2019年のダボス会議の専門家セッションでは「世界需要はせいぜい7万台」と報告されていた。
中国から米国に移動したチャイナ・ウィルスの大流行、またたくまに感染を広め、死者数が中国を越え、米国はマスクばかりか、クスリ、保護服、医療設備の多くを、じつは中国に依存していた事実に気付いて愕然となった。
トランプ政権は焦りの色が濃い。その弱点を突くかのように、馬雲率いるアリババは、1000台の人工呼吸器を米国に寄贈するとし、不足に悲鳴を挙げていたクオモNY知事が痛く感激した。
このためトランプは中国批判が瞬間的に柔らかくなったほどだ。
マスクのように材料とミシンがあれば手作りで出来るものから、保護服、検査機器、体温測定など、医療機器の分野は広い。この列に加わるのが風邪薬、咳止め、下夏剤などから、もっと高度な鎮痛剤など、いつの間にか欧米も日本も中国に依存していたのだ。
マスクの70%を日本は中国に依存してきた。いまごろ、シャープなど異業種にマスクを発注しても遅い、って。
病院関係者が使う保護服も、中国製品が多い。
ところがイタリア、スペイン、オランダなどが緊急輸入した中国製マスクも、保護服も不良品だった。豪は検査機が不良品として返品した。どさくさ紛れに、まがい物を売りつけるのは、中国人の得意技であることを、世界はあらためて学んだようだ。
▼人工呼吸器も中国依存だった???
さて人工呼吸器である。世界需要は100万台。NYだけでも三万台が緊急に必要とされ、製造メーカーに問い合わせたが、在庫は一台もなく、製造ラインを効率化して増産体制に移っても間に合わないことが分かった。
量産できるのは中国、スイス、ウエーデン、日本。とりわけ中国が突出している。そこで、トランプ大統領は「戦争製造法」に基づき、フォード、GM、テスラにも、設備転用で人工呼吸器の製造を要請した。日本もトヨタが乗り出した。
ところが問題が浮上した。人工呼吸器の中枢部品はスイスで作られていることが判明し、その部品メーカーはフル生産しても、需要に追いつけず、王毅外相が、スイスの関係者に強く供給を急ぐよう訴えていた。
どこへ? スイスのハミルトン社である。そう、あの時計の老舗、ハミルトンは精密部品、精巧は技術には定評があり、ロシェのウィルス探知機にも部品も供給している。中国はこのハミルトンからも中枢部品を買ってきたが、現時点で受注した人工呼吸器の五分の一しか部品がなく、生産ラインは部品持ちでストップ状態。そこで王毅外相が登場ということになったわけだ。
じつはハミルトン、米国ネバダ州に工場をもつ。ここで人工呼吸器のフル生産に入った。米国は時間との戦いとなった。
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