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Channel: 歴史と経済と医療の未来予測・歴史経済波動学
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勝つと思えば・思えば負ける。左右に激しく動く・世界戦国時代。

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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和元年(2019)12月23日(月曜日)
          通巻6317号   
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 BREXITの英国で保守党の勝利はトランプ再選の前兆か
  労働党大敗の原因は「社会主義化」を有権者が怖れたからだ
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 もし英国選挙で野党の「労働党が勝つと、より社会主義的政策が進み、英国株式市場の大手企業350社の時価総額が53兆円も凹む」というのは選挙期間中のプロパガンダ、つまりアジ演説に過ぎない。
だが、よほどパンチがあったようで、英国総選挙(12月12日)は、ボリス・ジョンソン率いる保守党が単独過半を獲得し、労働党は予想を超える大敗を喫した。コービン労働党党首は辞任を表明した。

 報道の分析によれば「鉄道、水道の国有化は社会主義であり、非効率をまねき経済を停滞させる」と主張した保守党の宣伝が奏功したというが、はたしてそうか。鉄道も水道も本来は国有が望ましいのではないのか。

 そこで選挙結果を精密に眺めると、保守党の得票率は、驚くなかれ僅か1ポイントしか上昇しておらず、原因は野党の分裂状況だったのだ。

小選挙区制だから一人区に二つ、三つと野党が立候補すれば労働党の票が割れる。実際にこの労働党の基礎今日が、保守党ではなく、自由民主党とブレグジット党へ流れ、結果的に労働党が365議席、労働党は203議席、自由民主党11.ブレグジット党はゼロ。選挙区の事情によるとはいえ、保守党の大勝利は1987年のサッチャー以来となった。

 さて重要なポイントがある。
 スコットランドでは独立を主張する「スコットランド民族党」(略称SNP。スタージョン女性党首)が13議席伸ばして48議席に躍進したことだ。

同地域の八割。しかも保守党は、この地域では7議席を失う大敗だった。2016年に行われた住民投票では「英ポンドが使えなくなる」との宣伝が奏功して、独立反対票が多く、一度は引っ込めた独立だが、これにより「もう一度、住民投票を」と叫ぶ声が強くなる。2020年の住民投票も確実となった。
 
 スコットランド独立は民族自決の立場に立てば当然であるが、この原理原則は状況によって異なるだろう。スコットランドの人口は600万足らずであり、英国との連合王国のままのほうが経済的にはメリットが大きい。

 欧州にとって悪夢は。現状の変更である。
パルセロナ独立はスペイン内乱の再来を予兆させるように、或いは英国にとって北アイルランド独立運動が、事実上再燃しているように、スコットランドの独立は欧州議会においても、厄介な問題を孕んでいる。

 住民投票の結果、独立と出ても、カタロニアがそうであるように、あるいは香港、台湾の現状を見れば、主張は主張として受け取られても、現実は難しい。

 現実の独立とは地方行政機構のうえに中央政府、それにともない外務省、教育省など行政機構の再編が必要であり、そのうえ独自の軍隊が必要になる。

通貨は独自の主権通貨を発行することになり、フラッグキャリアも必要だし、国連への代表も、そのうえ主要国に大使館を開設し、大使を任命する必要性がでてくる。そうした経済的負担を度外視しても、独立したいと動いたのが、嘗ての旧ソ連の十四カ国であった。

 逆にユーゴスラビアの分裂は、対ソ連戦の外交上の延長として欧米が支援した。セルビアをやりこめる、孤立させる。最終的にはセルビアからさらにコソボをもぎ取って無理矢理独立させた。

国連はコソボ独立を認めたが通貨はユーロであり、警備はNATO軍があたり、たとえば日本は大使館業務をウィーンの日本大使館が兼務する。コソボの独立はかたちだけである。東チモールもまた大国の不条理により、インドネシアの思惑はみごとに無視されて進んでしまった。

保守圧勝と喜んではおられず、英国政治は深刻な近未来の状況変化に備えなければ行けなくなったのである。


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