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中共における・内戦型世界大戦。  第三次内戦型世界大戦。

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
令和元年(2019)8月22日(木曜日)参
          通算第6180号  
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(休刊のお知らせ)明日8月23日から9月2日まで海外取材旅行のため休刊となります 
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 香港騒擾の影で、国際金融筋の強い関心事とは
  香港(HK)ドルは米ドルペッグ制を何時まで維持できるのか?
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 デモが長期化し、国際線がとまり、ストリートにガスが充満して通行人が涙し、遂に観光客が激減した。
それどころではなかった。貿易も船積みペースが緩慢となり、GDP成長率が凹んだのは予測通りだが、香港の大学と交換留学プログラムを組んでいたシンガポール国立大学は今年度の交換留学生百人の派遣を中止した。

 アリババは8月に予定していた香港株式市場への上場を十月に延期するとし、香港財閥一位の李嘉誠は新聞各紙に意見広告を打って「暴力はいけない」と唱えた。大手銀行は、おなじ意見広告でも「香港政庁の路線を支持する」と北京よりの意見を開陳した。

 悲鳴を挙げているのは観光シーズンを迎えて連日空室ばかりのホテル業界だ。チムサチョイの目抜き通りにあるミラホテル(部屋数492)、海岸よりのインタコンチネンタルホテル(523室)では賃金未払いのうえ、スタッフの解雇がおきているらしいとサウスチャイナ・モーイングポスト(8月22日)が報じている。
 李嘉誠が経営する10のホテルも部屋が連日のように空き、キャンセルはあっても、予約がない。ホテル従業員、観光業者の多くに自宅待機がなされているという。

 反対に嬉しい悲鳴を挙げたのはマレーシアだ。風が吹けば桶屋が儲かる?
 フォレストシティのマンション群、不評だったが、香港のデモ発生以来弐ヶ月で、香港の人が200軒を投資ではなく居住用として購入したという。これまで香港人の主力はカナだと豪だったが、両国が移民制限に傾いたことも影響しているという。
 
 ▲香港ドルにはアキレス腱がある


 香港経済の血流を支える通貨「香港ドル」の固定相場制にアキレス腱が露呈した。
 香港ドルは1983年以来、対米ドル固定制度である。1ドル=7・8HKドル(日々の変動幅は7・75−7・85)という為替レートは厳格に守られ、しかも1997年の「アジア通貨危機」に際しても微動だにせず、2003年のSARS危機でもさしたる変動はなかった。通貨下落はなかった。

 香港ドルのレート不動の秘訣は、厳格な発行基準と通貨管理である。
 すなわちHKドルの発券銀行は、その発行量に見合う米ドルを香港貨幣局(HKMA)に預託しなければならないのだ。
現在、HKドルの発券銀行は三つ。香港上海銀行、スタンダード&チャータード銀行、そして中国銀行である。
そのうえ、三つの銀行が発券するHKドルのデザインはみな異なっており、色も違う。香港へ行く日本人は戸惑ったものだった。

1996年まで、香港返還の前年までだが、筆者はよく香港に取材に行った。その度ごとに中国銀行のエコノミスト王某氏を訪ねた。
かれは日本の金融事情が知りたく、筆者は香港の金融事情などより大陸の状況が知りたく、おたがいに情報交換をしたものだった。その中国銀行が返還以後、香港ドルの発券業務にも参入してきたのである。

以後、香港へあまり行かなくなったのは簡単な理由で、香港経由で中国に行かざるを得なかったのはヴィザの関係だった。
当時まだ日本人は中国旅行の度にヴィザを申請する必要があった。抜け穴は海南島におけるアライバル・ビザと、香港で26000円を支払うと、半年有効のマルチ・ヴィザが「買えた」からだ。以後、東京から直行便で広州へも成都にも、西安へも哈爾浜にも直接行けるようになった。

三つのデザインが異なるHKドルの整合性のなさ、しかし偽札対策が急務だった。このため2018年末から1000ドルのデザインを統一し、19年三月からは500ドル札のデザインも発券三行が統一図案とし、色も同じにした。
デザインでことなるのは発券銀行の名前だけとなった。20−50HKドルのデザイン統一も年内に予定されている。

さて香港の外貨準備はGDPの1・25倍で、3800億ドル前後あり、外貨準備からHKMAに預託されている外貨は449億ドル。ちなみに香港住民の銀行預金はGDPの4・7倍、1・7兆ドルに達する。これほど健全で、安心できる通貨は稀であり、とりわけ中国からの観光客は香港ドルに交換しがちだった時期もある。いまでは人民元のほうがHKドルより強くなった。
 
 香港経済は金融、不動産、情報産業そして第三次サービス産業でもち、第一次産業は1%以下、ものをつくる工場はほぼ中国大陸へ移転した。
それでも香港の景気はよく、GDP成長は3・02%、の一人当たりのGDPは48500ドルだ(ちなみに日本のひとりあたりのGDPは41020ドル)。

 異変は為替レート市場において対ドルは不変であったが、対円の為替レートで下落がおきていた。2018年9月に1HKドルは14円60銭だった。19年8月1日、13円80銭。そしてデモの激化、国際空港座り込みによる欠航などがつづき、1HKドルは、2019年8月22日に13円58銭まで低くなった。

 金融筋はいう。「厳格な為替管理が裏目に出るというアキレス腱がある。米中貿易戦争は中継地としての香港経済にも悪影響があったが、そればかりか、もし、騒擾が長期化し、不動産価格が下落し(すでに相場は下落しているが)、GDP成長が鈍り、投資家が一斉に預金を海外へ逃がすとなると、HKドルは外貨準備の大きさにかかわらず下落する」

 ならば、人民元ペッグ制に切り替えるシナリオは考えられないのか。
 「そんなことはあり得ない。世界で信用のない人民元をHK貨幣局に預託しても、信用力があがることはないからだ」。

 専門家ならずとも、香港という國際金融市場はマネーロンダリングの本場として中国共産党が活用している市場であり、香港ドルの乱高下はたちまち人民元に響く。つまり中国としても香港ドルが脆弱化することは避けない。
 それゆえに想定外の角度から香港のアキレス腱が露呈したということである。
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