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中国、強まるネット言論統制 検閲vs隠語のやまぬ戦い
中国・台湾 2017/12/12 2:00 日本経済新聞 電子版
中国の習近平(シー・ジンピン)最高指導部がインターネット上の言論統制を強めている。共産党への批判を封じ込めるため、問題があると判断した文章を削除する能力を高めている。それでも正しい情報を求める人々は、新しい隠語を生み出して対抗する。当局が人工知能(AI)などの新技術を次々と繰り出すなかで意地を貫き通せるか。
中国はスマホを通じてSNSなどのネットサービスが市民に浸透
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中国はスマホを通じてSNSなどのネットサービスが市民に浸透
「習主席、すばらしい歓迎式典をありがとう」。トランプ米大統領は11月の訪中時、ツイッターで何度もつぶやいたが、中国の国民は目にしていない。中国当局が築いた「ネットの長城」と呼ばれるネット監視システム「金盾工程」により、米ツイッターのサービスは原則として利用できないためだ。
当局はネット企業に対し、治安に悪影響を与えかねない情報を自主検閲して削除するよう要求。応じないツイッターのほか、米グーグル、米フェイスブックは「長城」によって中国の国民のスマートフォン(スマホ)から遮断されている。
中国の国民の大半は中国版LINE(ライン)である騰訊控股(テンセント)のスマホ向け無料対話アプリ「微信(ウィーチャット)」など自主検閲を受け入れるサービスを利用している。
社会や政治の動向を知りたい国民はどう情報を得るのか。中国ネット企業のサービスでは、最高指導部などにかかわる内容はご法度だ。当局が「敏感詞」と呼ぶ検閲対象語を決めており、ネット企業は敏感詞が掲載されると、文章やページごと自動的に削除する仕組みを導入している。
業界関係者によると、敏感詞は10年に約1千だったが、15年に5千を超え、最近は1万以上に増えた。AIの登場によって「習近平」の「習」と「近」の間にスペースを入れたり、発音が同じで違う漢字を使ったりしても削除される。敏感詞を紙に書いて撮影した写真も削除されるようになった。
そんな中で生み出されたのが隠語だ。「デモ」は参加者が皆で歩くから「散歩」というように連想できる言葉に置き換える。習氏ならば、容貌が似ているという理由で「くまのプーさん」などだ。
隠語も検閲側が把握すると敏感詞となって利用できなくなる。「くまのプーさん」の習氏とまったく関係のない情報まで発信できなくなり、世界で話題となった。
それでも人々は新たな隠語をつくって情報をやり取りする。習氏の右腕として活躍してきた政治家の王岐山氏。人々は名前の「岐山」と発音が近い「七三」という隠語が使いにくくなると、内陸部陝西省の町「岐山」の有名な麺料理の名を使うようになった。
検閲当局と人々のいたちごっこは、総じて当局側が優勢だ。検閲の対象を不特定多数が閲覧する書き込みから、友人など特定の利用者との間のグループチャットにも拡大。「違法情報」として削除された件数は7月から従来の2倍の水準に急増した。
今夏には社会問題に取り組む弁護士らのブログなどを1千以上も閉鎖させた。ある弁護士は「情報発信そのものができなくなった」と打ち明ける。中国に住む日本人や日本語を使う中国人が使うヤフー・ジャパンでの検索もできなくなり、ネット言論の統制に緊張が走る。
巨大な中国市場を前に欧米企業の対応は分かれる。「ネットの長城」にはじかれたフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は再参入に意欲を示すが、検閲の強化によってハードルは上がる一方だ。
英ケンブリッジ大出版局が中国当局の要請を受け、天安門事件などに関する論文への中国からのアクセスを一時的に遮断したことが注目を集めた。「世界の動きから取り残され、学生の自由な発想が阻害されれば、中国の成長に悪影響が出る」。中国で活躍する外国人教授は警鐘を鳴らす。(北京=多部田俊輔)
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● 時代は経るほどに、悪化する自由と民主主義。西欧のよき自由と民主主義の
伝統を受け継ぐ日本の責任は重い。独裁国家の大包囲網を築け。
中国、強まるネット言論統制 検閲vs隠語のやまぬ戦い
中国・台湾 2017/12/12 2:00 日本経済新聞 電子版
中国の習近平(シー・ジンピン)最高指導部がインターネット上の言論統制を強めている。共産党への批判を封じ込めるため、問題があると判断した文章を削除する能力を高めている。それでも正しい情報を求める人々は、新しい隠語を生み出して対抗する。当局が人工知能(AI)などの新技術を次々と繰り出すなかで意地を貫き通せるか。
中国はスマホを通じてSNSなどのネットサービスが市民に浸透
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中国はスマホを通じてSNSなどのネットサービスが市民に浸透
「習主席、すばらしい歓迎式典をありがとう」。トランプ米大統領は11月の訪中時、ツイッターで何度もつぶやいたが、中国の国民は目にしていない。中国当局が築いた「ネットの長城」と呼ばれるネット監視システム「金盾工程」により、米ツイッターのサービスは原則として利用できないためだ。
当局はネット企業に対し、治安に悪影響を与えかねない情報を自主検閲して削除するよう要求。応じないツイッターのほか、米グーグル、米フェイスブックは「長城」によって中国の国民のスマートフォン(スマホ)から遮断されている。
中国の国民の大半は中国版LINE(ライン)である騰訊控股(テンセント)のスマホ向け無料対話アプリ「微信(ウィーチャット)」など自主検閲を受け入れるサービスを利用している。
社会や政治の動向を知りたい国民はどう情報を得るのか。中国ネット企業のサービスでは、最高指導部などにかかわる内容はご法度だ。当局が「敏感詞」と呼ぶ検閲対象語を決めており、ネット企業は敏感詞が掲載されると、文章やページごと自動的に削除する仕組みを導入している。
業界関係者によると、敏感詞は10年に約1千だったが、15年に5千を超え、最近は1万以上に増えた。AIの登場によって「習近平」の「習」と「近」の間にスペースを入れたり、発音が同じで違う漢字を使ったりしても削除される。敏感詞を紙に書いて撮影した写真も削除されるようになった。
そんな中で生み出されたのが隠語だ。「デモ」は参加者が皆で歩くから「散歩」というように連想できる言葉に置き換える。習氏ならば、容貌が似ているという理由で「くまのプーさん」などだ。
隠語も検閲側が把握すると敏感詞となって利用できなくなる。「くまのプーさん」の習氏とまったく関係のない情報まで発信できなくなり、世界で話題となった。
それでも人々は新たな隠語をつくって情報をやり取りする。習氏の右腕として活躍してきた政治家の王岐山氏。人々は名前の「岐山」と発音が近い「七三」という隠語が使いにくくなると、内陸部陝西省の町「岐山」の有名な麺料理の名を使うようになった。
検閲当局と人々のいたちごっこは、総じて当局側が優勢だ。検閲の対象を不特定多数が閲覧する書き込みから、友人など特定の利用者との間のグループチャットにも拡大。「違法情報」として削除された件数は7月から従来の2倍の水準に急増した。
今夏には社会問題に取り組む弁護士らのブログなどを1千以上も閉鎖させた。ある弁護士は「情報発信そのものができなくなった」と打ち明ける。中国に住む日本人や日本語を使う中国人が使うヤフー・ジャパンでの検索もできなくなり、ネット言論の統制に緊張が走る。
巨大な中国市場を前に欧米企業の対応は分かれる。「ネットの長城」にはじかれたフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は再参入に意欲を示すが、検閲の強化によってハードルは上がる一方だ。
英ケンブリッジ大出版局が中国当局の要請を受け、天安門事件などに関する論文への中国からのアクセスを一時的に遮断したことが注目を集めた。「世界の動きから取り残され、学生の自由な発想が阻害されれば、中国の成長に悪影響が出る」。中国で活躍する外国人教授は警鐘を鳴らす。(北京=多部田俊輔)
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● 時代は経るほどに、悪化する自由と民主主義。西欧のよき自由と民主主義の
伝統を受け継ぐ日本の責任は重い。独裁国家の大包囲網を築け。