
★ http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41612
企業の罪と政府との和解:米国ビジネスの犯罪化 2014.09.01(月) The Economist
(英エコノミスト誌 2014年8月30日号)
悪事を働いた企業は罰しなければならないが、現状では法制度が恐喝の仕組みと化している。
世界で最も実入りのいい恐喝を行っているのは誰か? シチリアのマフィアか? 中国の人民解放軍か? ロシアの腐敗した政治家か? 大企業の立場から見れば、いずれも貪欲さの点で、米国の規制システムに及ばない。
規制システムの恐喝手段は単純だ。何か悪いことをしているかもしれない(していないかもしれない)大企業を探し、商業的な破滅を盾にとって経営者に脅しをかける。できれば刑事告発をちらつかせるのが望ましい。秘密裏の和解を成立させ(従って、誰も詳細を確認できない)、告発を取り下げる代わりに株主のカネで膨大な罰金を支払わせる。そして、また別の企業で同じことを繰り返すのだ。
こうして支払われる額は、気が遠くなるほど大きい。今年これまでに、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェース、シティグループ、ゴールドマン・サックスといった銀行が、不動産担保証券を巡って投資家を欺いたとされ、500億ドル近くを支払っている。BNPパリバは、米国がイランやスーダンなどに科している制裁に違反した罪で、およそ90億ドルの罰金を支払った。クレディスイス、UBS、バークレイズなどの銀行も、様々な告発を和解に持ち込み、何十億ドルも支払っている。
しかも、上述したのは金融機関だ。英BPが石油掘削施設「ディープウォーター・ホライズン」の原油流出事故を巡り支払った130億ドルの和解金や、トヨタ自動車の一部の車種で申し立てられた不具合を巡る12億ドルの和解金など、数多くの例がある。
多くの場合、企業は確かに、何らかの形の罰を受けて当然のことをした。BNPパリバの行為はジェノサイドを幇助する恥ずべきものだし、米国の各銀行は悪質な投資話で顧客からカネを巻き上げ、BPはメキシコ湾の環境を破壊した。
だが、正義というものは、恐喝により密室で行使すべきものではない。米国で企業の行動が犯罪化されるケースが増えている現状は、法の支配にとっても資本主義にとっても有害だ。
心も体もない? 何の問題もない
ほんの1世紀前までは、企業が犯罪者になるという概念は、米国の法には存在しなかった。18世紀のイングランド大法官、エドワード・サーロウが言ったように、企業には罰すべき体も咎めるべき心もなく、従って「有罪」にはなり得ない、という考え方が広く行き渡っていた。
だが、価格統制に背いた鉄道会社に対する1909年の訴訟を機に、企業は従業員の行動に責任を負うという原則が確立された。そして現在の米国には、何らかの刑事罰を伴う規則が数十万件も存在するようになった。
その一方で、1960年代以降の民事「集団訴訟」を通じて、企業経営者は、時間と費用のかかる厄介な裁判を回避するために、迅速かつ密かな和解の道を探るという知恵を学んだ。
民事訴訟により不法行為を処罰する米国のシステムについては、欠点がよく知られている。目新しいのは、規制当局や検察が事実上の密室裁判を行うそのやり方だ。「公共性」を盛んに口にしてはいるものの、罰金を手にする機関はプロフィットセンターと化している。
ロードアイランド州の官僚は、グーグルの支払った5億ドルのおかげで公的資金を湯水のように使っている。ニューヨーク州の知事と検事総長は、JPモルガンの6億1300万ドルの和解金を巡って小競り合いを起こした。
そして彼らの権力は、法廷弁護士のそれよりもはるかに大きい。規制当局は、自ら起こす訴訟の原告であることに加えて、事実上の判事であり、陪審でもある。しかも彼らは、刑法という脅しを使うこともできる。
無実であっても企業が罰金を支払って和解する理由
金融機関が刑事で起訴されれば、まず生き延びることはできない。ドレクセル・バーナム・ランバートやEFハットンと同じ運命を望む企業など、ほとんどないだろう。また、企業の経営者にとって、個人として刑事で起訴される脅威は、キャリアを終わらせる破滅的事態に等しい。当然のことながら、株主の財布を空にする方が簡単だ。
「和解金を支払った大企業にしても、自分たちが無実だと分かっているのなら、支払ったりしないのでは?」と訊く人がいたら、こう答えよう――奇妙な話だが、それでも支払うかもしれないのだ。
恐らく、この問題の最も有害な側面は、秘密性と不透明さだろう。事件の詳細が公表されることは決してないし、いったい誰が――心と体を持つ特定の誰かが――責めを負うべきだったのかも分からない。問題が法廷で争われないため、判例が確立されず、厳密には何が違法なのかも判然としない。それにより今後のさらなる恐喝が可能になる一方で、法の支配が揺らぎ、大きな代償を払うことになる。
一方、規制当局の戦利品がどのように分配されているのかも不透明だ。再選に向けて出馬するニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は、BNPパリバの和解金の分配に介入し、ウォール街での事業認可を取り消す権限を行使すると脅して、州の分け前を10億ドルほど増やしたと報じられている。
そもそも、連邦政府の外交政策に背いたために科せられたフランスの銀行の罰金を、なぜ州政府に分配しなければならないのかもよく分からない。
法廷で会おう――生まれ変わったら
最善の策は、そうした事例の少なくとも一部を、きちんとした裁判にかけることだろう。そうすれば、多少なりとも事実が明らかになるはずだ。そうした対策は、規制当局側にとっても、その取り締まり上の犠牲者にとってもほとんど利益にはならないが、少なくとも株主はそれを要求すべきだ。
米議会上院のエリザベス・ウォーレン議員とトム・コバーン議員は、こうした和解の条件を公表させる法案を提出している。その法案が手始めになるだろう。検察当局と規制当局に対しても、そもそもの告発の重大さを考えれば、問題を法廷に持ち込まなかった理由を公表するよう求める必要がある。
長期的には、法制度の2つの点を改革する必要がある。まず、企業問題における民法と刑法の区別をもっと明確化することだ。大抵の企業の不法行為は金銭に関係するもので、民事裁判の範疇にある。そうした裁判の途中で、経営者個人が刑法に違反していたことが明らかになった場合には、該当者を刑事で起訴すればいい。
第2に、法制度を大幅に刈り込む必要がある。米国建国時には、連邦犯罪に指定されていたのは、反逆、通貨偽造、海賊行為の3つだけだった。だが現在では、多すぎて数えきれないほどだ。1990年代初めにある法学教授がまとめた最も新しい推計では、刑事罰を伴う規制法は、恐らく30万件に上るとされていた。以後、その数は増える一方だ。
特に金融機関に関しては、今やあまりにも多くの法が存在し、その内容はあまりにも複雑だ(ドッド・フランク改革により生まれた数千ページに上る新規則がよい例だろう)。そのため、法の執行が裁量任せになっている。
この状況は、法の支配の基礎となる予測可能性と明確さを蝕み、差別的な――そして恐らくは腐敗した――司法制度を招くリスクを秘めている。そうした司法制度の下では、誰もが何らかの罪で有罪となり、刑罰が政治的取引により決まる恐れがある。
中国の司法制度では、企業に対して法が恣意的に適用されている。だが、米国がそれを非難することは、到底できないだろう。いまや当の米国の司法制度が時折、ほとんどそれに劣らぬ酷い様相を呈しているのだから。
© 2014 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
資本主義制度の死と犠牲者たち・恐喝の世界≒司法取引
● 中共の最近の外国企業に対するバッシングは正に、USAを模倣したものです。
USAが武人化する兆候は、資本主義270年の道半場を過ぎたことから、
その萌芽は見られたという事でしょう。
● 司法取引”という制度は、完全に秘密の世界で企業をカツアゲできるという事では
最高の恐喝・カツアゲ手段です。法の精神に完全に違反しています。
そもそも裁判で犯罪を明らかにするのが、民主主義の基本です。
● 民主主義の元では、まずは有罪か無罪かが問われ、有罪なら何がどう有罪で、法の
どの部分に違反しているかが明白化されて、罪と罰はバランスが取れるのです。
その裁判抜きの、密室での取引は、それ自体が法を無視して、司法の恣意的
な権力行使が可能な事を意味します。
■ 正に司法権力=武人が、資本主義の支配者である企業人を支配した瞬間でしょう。
警察や司法制度の人治化、庶民の武装化、貧富の差の拡大等、あらゆるものが
武人化の様相を示しています。
■ 日本の企業は、中国でUSAで更に、USAの司法は世界中に手を伸ばす事が出来ますから、
世界何処にいても、企業は狙われる時代が来たのです。勿論恐喝の対象です。
臆病で戦う能力がないから、カツアゲに会う事は馬鹿でも分かります。
□ 企業はその資産をヤクザから、恣意的権力から守るには、政商化するか、または自らの
武力=自衛隊を持たなくてはいけないのです。時代がそのように動いているのです。
無防備では、ただ野垂れ死にするのみです。
□ 貴方のボスが、社長と思っていたのに、ヤクザの親分になるのです。どうしますか?

