★ http://blog.goo.ne.jp/msi021112/e/8f9b35aad6c1d2f91588f42c3644eca6
史上最長のストでも急騰が見られなかったプラチナ
この3連休は19日土曜日が午後の時間帯に都内大手町のKDDIホールで「変貌するブラジル、変わらぬ金」というタイトルの催し物でブラジルの専門家の方の後のセッションで70分間最近のそして今後の金市場を取り巻く環境についての話をさせてもらった。フリーアナウンサーで自身も一投資家の大橋ひろこさんとの掛け合いだった。ラジオNikkei「マーケット・トレンド」拡大バージョンのような感じで、事前の打ち合わせはなし。とはいえ、事前に話題になりそうな関連資料を作っているので、8割くらいはその内容に収れんする。
1週間ほど前にメールにて、プラチナ、パラジウムにも触れようとの話があり、需給表など用意して、PGI(白金系メタル)について思うところを話した。プラチナに関心のある人が思っているのは、5ヵ月にわたるストにも関わらず、なぜ目立って上がらなかったのかということではないかと思い、その点に絞った。
プラチナは添付のチャートにあるように2008年に急騰そして暴落という相場を出しているという話から始めた。この時は、南アの電力公社エスコムの電力供給が大雨で同社への石炭納入業者の貯蔵施設が水浸しになり、供給が減ってしまい(当時の)発電能力が落ちるということがあった。金でもプラチナでも南アの鉱山は電力を大量消費することで知られ、まさに電力供給は命綱。電力不足は、そのまま生産不足につながるとの思惑を前面に押し立てて盛んにファンドが買い上がった相場だった。2008年は原油も147ドルまで大相場を出し、リーマンショック後には30ドル台まで暴落というプラチナと同じ道を辿っている。いずれも急騰は、欧米の投資銀行がコモディティの「スーパー・サイクル」だとか何とか理由だてをして買い煽った時期でもある。
つまり当時と今の違いを分かりやすく言うなら、2008年は欧米の投資銀行を中心にヘッジファンドがさながら株式市場の「仕手筋」のようにプラチナ市場に入っていたが、今回はそれほどの資金は入っていなかったということ。当時はなかったボルカールールなど規制の存在が大きい。
一方、需要家は、材料として使うのに安定供給が前提となるにもかかわらず、供給見通しに不安があるばかりか価格も乱高下というのはたまったもんじゃない。この時の出来事は調達サイドでは教訓として今に行かされていると思われる。つまり白金族系はこうした事態を前提に考えるべきとの受け止め方ができ、おそらく在庫の積み増しを行っていたのは間違いない。特にプラチナは一昨年の夏に3位のロンミン社のストが過激化し警官隊と衝突し死傷者が出たことで、さらに警戒感が高まったと見られる。南アでは鉱山ストは毎年恒例とも言えるもの。この分だと来年も揉める…というのは想定の範囲内の話。それでさらに在庫を積み増したということだろう。
興味深いのは、プラチナやWTI原油のような値動きを金はしていないという点。リーマン前の高値をプラチナも原油もいまでも抜けないでいるが、金は数ヵ月で抜いてその後高値の更新を続け2011年8月そして9月に至った。
