約4万人の患者を対象にステップダウンが及ぼす影響を検討
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喘息があると、喘鳴などの症状をコントロールするために、複数の薬剤を必要とする場合が少なくない。しかし、一部の患者では、喘息を増悪させることなく薬剤を減らせる可能性があるとする研究結果を、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)のChloe Bloom氏らが「PLOS Medicine」7月21日オンライン版に報告した。
喘息の治療では、喘鳴などの症状が現れたときにレスキュー使用するアルブテロールなどの「発作治療薬(リリーバー)」と、吸入ステロイド薬などの「長期管理薬(コントローラー)」が使用される。長期管理薬として使用される吸入薬は、症状がなくても喘息の再燃を促す炎症を抑えるために、毎日使用する必要がある。そのほか、長時間作用性気管支拡張薬とステロイド薬が配合された吸入薬や、さまざまな経口薬、生物学的製剤が使われることもある。
喘息の臨床ガイドラインでは、可能であれば喘息治療薬のステップダウン(使用する薬剤を減らすアプローチ)を行うことが推奨されているが、医療現場での治療薬の処方パターンに関するデータは限られている。そこでBloom氏らは、2001~2017年に、英国内で喘息の治療を受けた50万8,459人のデータを分析し、この期間での喘息治療薬の使用状況を検討した。
その結果、この間に、より高用量の治療薬を処方される患者の割合が着実に増えていたことが判明した(2011年の49.8%に対し、2017年は68.3%)。また、治療開始時に吸入ステロイド薬と長時間作用性気管支拡張薬を処方されていた患者の70.4%は、平均6.6年に及ぶ追跡期間中にも同じ薬剤を使用し続けていた。
次にBloom氏らは、対象者の中から12万5,341人(平均年齢50.4歳、39.4%が男性)を抽出して、治療のステップダウンが及ぼす影響を調べた。その結果、このうちの3万9,881人で、長時間作用性気管支拡張薬などの併用を中止するか、ステロイド吸入薬の用量を減らす形で、治療のステップダウンが行われていた。しかし、ステップダウン後の増悪リスクの有意な上昇は認められず、発作治療薬の処方が増えることもなかった。それどころか、症状が安定している喘息患者では、治療のステップダウンにより、副作用のリスクや服薬に対する負担感が軽減されることが明らかになった。また、治療費に関する分析からは、高用量の薬剤を使用している、病状が安定した喘息患者の半数に対してステップダウンを行うだけで、大幅な節減効果が得られることも判明したという。
これらの結果からBloom氏は、「喘息治療のステップダウンは、適切な患者に行えば、安全で、医療費削減にもつながり、長期にわたる薬物治療の副作用のリスクも低下する可能性のあることが確認された」と述べている。
ただしBloom氏は、「医師に相談することなく喘息治療薬の使用を中止してはならない」と述べ、医師が治療のステップダウンを考慮するには、喘息が良好にコントロールされた状態が維持されている必要があるとしている。
一方、米国アレルギー・喘息・免疫学会(ACAAI)会長のAllen Meadows氏は、「必要以上に薬を使用すべきではないため、治療のステップダウンは重要である」としながらも、このデータは英国人を対象にしたものであり、治療費や医療保険制度が英国とは異なる米国では、この研究結果は当てはまらない可能性があるとの見方を示している。また、同氏は、米国の喘息患者のほとんどは、ステップダウンではなく、むしろステップアップを必要とする状態であることを指摘し、「喘息治療薬を減らす前に、まずは医師の診察を受け、肺機能を評価してもらうことが重要だ」と話している。
HealthDay News 2020年7月21日
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