一方で糖尿病前症では有意差なし
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脳卒中後の認知機能低下に、糖尿病が関連している可能性が報告された。ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)のJessica Lo氏らの研究によるもので、詳細は「Stroke」5月14日オンライン版に掲載された。
Lo氏らは、脳卒中後の認知機能について各国から報告された7件の観察研究データを統合して解析し、糖尿病の影響を調べた。対象患者数は合計1,601人、平均年齢は66.0歳で、63%が男性、アジア人が70%、白人が26%を占め、アフリカ系アメリカ人が2.6%。対象に含まれる糖尿病は主に2型糖尿病だった。
耐糖能レベルは空腹時血糖値によって、7mmol/L(126mg/dL)以上を糖尿病、6.1~6.9 mmol/L(110~125mg/dL)を空腹時血糖異常(糖尿病前症)、6.1 mmol/L(110mg/dL)未満を正常耐糖能と3群に分けて判定した。それぞれの割合は、糖尿病が36%、糖尿病前症が12%、正常耐糖能が52%だった。脳卒中のタイプとしては、ほぼ全ての患者が虚血性脳卒中だった(出血性脳卒中は14人)。
認知機能は、脳卒中の発症後3~6カ月の間に評価した。認知機能に影響を及ぼす可能性のある因子(年齢、性別、BMI、喫煙、民族、教育歴、病変部位、脳卒中の既往、高血圧、心房細動)で調整後に、正常耐糖能群を基準としてZスコアを各群で比較した。
その結果、糖尿病群の認知機能は正常耐糖能群に比べ59%有意に低く(SD-0.59、95%信頼区間-0.82~-0.36、P<0.001)、注意・情報処理速度、記憶、言語スキル、知覚運動スキル、実行機能など全てのドメインに有意差が認められた。一方、糖尿病前症群の認知機能は正常耐糖能群と有意差がなく(SD-0.10、95%信頼区間-0.45~0.24、P=0.55)、各ドメイン別の検討でも有意差は認められなかった。
7件の研究の中でHbA1cも測定されていた4件の研究を基に、HbA1cを用いて耐糖能レベルを層別化した検討においても、結果は同様だった(糖尿病群:SD-0.67、95%信頼区間-0.97~-0.37、P<0.001。糖尿病前症群:SD-0.03、95%信頼区間-0.34~0.29、P=0.87)。
著者らは「この結果は脳卒中患者に対し、糖尿病前症から糖尿病への進行を防ぐための介入の重要性を示すものだ」と述べている。
なお、数名の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。