「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和2年(2020)5月10日(日曜日)
通巻第6493号
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中国、デジタル人民元の実証実験を開始
次の中国ウィルスは、ドル基軸体制を揺さぶるデジタル人民元ではないか
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中国が、深セン、蘇州、成都ならびに雄安(新都市)において、デジタル人民元の実証実験を開始した。
新聞の片隅にしか報じられていないが、もっと注目されてしかるべき動向である。これは「新通貨」とか、カード、スマホ決済とかの新手法として片付けられない、中国の秘めた野心が存在している。
昨夏以来、西側が騒いでいたのは暗号通貨の「リブラ」だった。
フェイスブックが主導してスイスに「協議会」を設立し、マスターカード、VISA、ペイペイなど有力企業十数社が参加予定だった。米議会が騒ぎ出して、デジタル通貨の安全面での保障がないとして欧米の中央銀行が猛烈に反対し、事実上リブラは頓挫した。
暗号通貨はビットコインなど、世界ですでに流通しているものが十数種類あり、西側の金融当局や銀行筋が考えているのはブロックチェーンによるものである。
つまり政府が管理できる通貨の創出である。リブラは政府の管理管轄を越える危険性があり、懐疑的な意見が強い。
この間隙を縫うようなかたちで、中国は中国共産党が管理する、デジタル通貨=「デジタル人民元」を発行する目論見があり、流通の実験に踏み切ったことになる。
5月8日、ビットコインは三ヶ月ぶりに1万ドルの大台を回復した。コロナウィルスの恐怖心理がピークだった三月には半値の5000ドル台に落ち込んでいた(3月14日には4000ドル台に急落した)、謎の回復ぶり。デジタル人民元の実証実験開始と平仄があうような気がする。