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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和弐年(2020)1月23日(木曜日)弐
通巻6350号
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(休刊のお知らせ)小誌は明日1月24日─30日が海外取材のため休刊となります。
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中国ハッカー集団「TICK」、三菱電機にサイバー攻撃
盗まれたのは防衛技術情報より人事、個人のプロファイルだった
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中国のハッカー集団の手口は世界一流。なんでも盗んでいくので、うっかりコンピュータに繋げると危ないという認識が徐々に日本企業にも拡がっている。
最初は政府官庁のホームページが改竄され、つぎに大手企業やベンチャーのHPが被害にあった。HPのつくり直しには二百万円以上かかるのが相場だった。しかしHPから、機密データや、貴重な箇所への侵入は難しいとされた。
考えてみれば中国ハッカー軍団のHP攻撃は「練習」だったのだ。
孫子は「攻撃は最大の防御なり」と言ったが、攻撃の訓練を重ねなければ防御のノウハウは得られない。だから米国などはハッカーの天才少年を、逆にスカウトするのだ。
1月20日に三菱電機が発表したところでは、企業機密、個人情報が中国のハッカーによって盗まれた形跡があり、ただし流出したデータに防衛、電力、鉄道などの社会インフラに関するデータはなかったとした。
では何が盗まれたのか。個人情報である。退職者を含めて8100名分の個人データが流出した。これこそが不安の種ではないのか。すでに3000名の台湾企業「TSMC」から、高給で中国企業にスカウトされたように、ベテラン技術者の中国流出予備軍ではないのか。
しかも三菱電機のハッカー被害は氷山の一角でしかない。防衛技術に携わる日本企業は富士通、日本電気など数知れない。
戦後の平和惚けが日本を覆い尽くし、貴重なデータを補填する準備はあっても、ハッカーの侵入防御システムが遅れた。
トランプ政権は、出遅れた5Gの状況を認識し、一足飛びに6G時代を目指して、宇宙軍を創設し、関連部署にも拍車をかけて、劣勢挽回に動く。
日本との共同も視野に入れているが、量子暗号と光通信ではNTTと東芝が頭ひとつリードしている。だから東芝買収を狙う外国ファンドが市場の周辺をうろついているのだ。
6G開発に官民がまとまることとなった日本だが、研究成果、企業機密などを狙う中国の動きを、きちんと監視するシステムが日本にはない。
すでに開始された5G時代は高速化と大容量で従来の4Gレベルを超えるが、2030年に想定されている「6G」は、5Gの十倍の高速通信、同時にネット接続、まして電力消費の節電、セキュリティは量子コンピュータにより、AI制御となるネットワークなど、その技術目標が開示されている。
指摘したように日本のNTT、東芝が先行する。セキュリティが心配である。