「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和弐年(2020)1月20日(月曜日)
通巻6345号
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ハイテク兵器の汎用部品となる製品を中国へ輸出するな
米国、台湾やオランドに最強の圧力、ハイテク流出阻止へ
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半導体製造装置を創れるのは日本と米国、そしてオランダである。韓国と台湾も部分的な製造装置は作っているが、大局的技術として影響が薄い。
狙われたのはオランダだった。リソグラフィ(露光装置)に優れる蘭ASML社。なにしろ中国は半導体を自製できないため、インテル、クアルコム、サムソン、そして最大の供給源は台湾のTSMCに依存してきた。中枢部品は日本依存だった。
2019年11月、オランダ政府は対中輸出ライセンスを与え、出荷直前だったASLM社のリソグラフィ装置の中国企業(SMIC社と言われる)への船積みを保留した。
契約金額は1億5000万ドル、SMICの中国名は「中芯国際集成電路製造」、いまのところ中国最大の半導体メーカーである。
世界最大の半導体メーカーは米インテル。同社はZTEへの半導体供給をやめたため、ZTEは倒産しかけた。習近平がトランプに緊急に電話し、14億ドルの罰金(イランへの不正輸出)を支払って供給を条件付きで再開してもらった。
インテルは主力工場をイスラエルへ移管する。
中国企業はクアルコム買収にも迅速に動き、M&A成立寸前にトランプ政権が割って入った。クアルコムが中国籍になる寸前だった。
さて半導体の設計は英国のアーム社である。
これを3兆円の巨費を投じて買収したのは孫正義だった。アーム社は設計図の中国への提供を規制した。このためチャイナアームという怪しげな合弁子会社が中国に誕生し、気が付けば孫正義は、保有した株式を、前者中国合弁のファンド筋に売り払っていた。
TMSC(台湾積体電路製造)には「軍事用半導体を米国で生産するように」とトランプ政権が圧力をかけている。TMSCは次世代ジェット戦闘機F35仕様の半導体を製造しており、このハイテク兵器部品が中国に流れる可能性が高いため、トランプ政権は執拗な圧力を継続している。
TMSCは二股をかけて、制裁を回避するため、中国に合弁企業をあたらしく作り、この面妖な合弁企業に、なんとエンジニア3000名の台湾人が移籍した。表向きの理由は給料が2倍なので、大挙してスカウトされたとした。
▼焦りだした中国は国有企業にメス
中国でのIT産業、スマホなど一連に新時代のハイテクは「民間」企業が立ち上げた。とは言えアリババもテンセントもトップが共産党員、ファーウェイは軍部との密接な関係があることは天下周知の事実である。
中国はデジタル監視技術や公安データ、防犯システム、送電管理、リチウム電池製造メーカーなど40社以上を昨年末までに国有化した。国有化されたのは美亜柏科、連光軟件、英飛拓、東方網力など。
「ハイテク企業のテコ入れ」を表向きの理由としているが、本質的にはハイテク企業の統括と軍事技術との整合性の深化にある。
同時に中国は国有企業の人事を次々と入れ替え、しがらみのない、汚職に染まりそうにないエリートと交代させている。しがらみがなければ透明性が高まるだろうが、その分、経営的なマネジメントに遅れがでるだろう。
シノペック(中国石油化工業集団)、CNPC(中国石油天然気集団)、それに送電大手の「国家電網」などだ。
総合的な見地からいえば、米国の中国排斥戦略への対応であり、国家安全保障の発想から組織的再編を急ぐわけだが、ファイナンスの面から考えると、首をかしげたくなる。
アリババは香港に上場した。五億株の新株で、およそ1兆2000億円をかき集めた。アリババは既に2014年にウォール街に上場しており(時価総額54兆円。このうちの14兆円がソフトバンク保有)、香港でも上場となると重複になるが、問題は「なぜ、資金が必要なのか?」ということだろう。なぜなら新株発行というのは、新しい借金を意味するからである。
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