今までの外交努力が水の泡。習近平「国賓」で安倍首相に痛烈批判
国際2020.01.07 154 by 北野幸伯『ロシア政治経済ジャーナル』
経済や国際情勢等、先行き不透明感を抱えたままスタートを切った2020年ですが、我が国は各国に対してどのような外交姿勢を示してゆくことが望ましいのでしょうか。かねてから中国との距離感について危機感を記してきた国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは今回、自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、「習近平の国賓待遇訪日」など親中化に舵を切っているとしか思えぬ現政権に対する米有力紙の痛烈な批判記事を紹介し、改めて媚中外交の危険性を指摘しています。
ニューズウィークが安倍総理を痛烈批判「【地獄】を見るまで目覚めない」
皆さんご存知のように、RPEはかなり前から「習近平の国賓訪日」に大反対しています。たとえば今から1か月以上前の11月22日、ダイヤモンドオンラインに「習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由、魂胆は『天皇の政治利用』」という記事を書きました。読んでいない方は是非ご一読を。
● 習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由、魂胆は「天皇の政治利用」
ここで私は、習の国賓訪日がNGな4つの理由を挙げました。1番目の理由は、中国への過度の接近が、同盟国であるアメリカとの関係を破壊するから。2018年に、米中覇権戦争がはじまった。その直後から、同盟国日本は、中国に接近しはじめた。これ、普通に考えれば、【裏切り行為】でしょう?
2つ目の理由は、「ウイグル問題」。中国政府が、100万人のウイグル人を強制収容している事実が広く知られるようになってきた。ナチスドイツとも比較される独裁国家の長を、天皇陛下に会わせる????とんでもないことです。
第3の理由は「香港問題」。第4の理由は、中国政府が天皇陛下を政治利用するから。1989年、中国は天安門事件で世界的に孤立しました。この時、中国は、一番「平和ボケ」「お人よし」「ナイーブ」な日本政府に接近したのです。そして、1992年の天皇訪中を実現させた。これを見た欧米は、「狡猾な日本は、巨大な中国市場を独占するつもりだ!」と焦った。それで、1993年から、欧米と中国の関係は正常化された。中国は、見事に天皇陛下を【政治利用】することに成功したのです。
そして、1994年、中国は国内で「反日教育」、世界で「反日プロパガンダ」を開始した。これは、何でしょうか?日本を米中共通の敵にするため、「悪魔化工作」を開始したのです。それで、クリントン政権は、非常に反日でした。また同じ過ちを繰り返すのは、愚かです。
以上4つの理由で、私は習の国賓訪日に反対しています。そして、「日本は第2次大戦時、ナチスの同盟国になって敗戦した。今度は、ウイグル人100万人を強制収容している中国に接近して敗戦する」と警告しつづけてきました。
最近は、さまざまな人が、「習国賓訪日反対」と公言するようになり心強いです。しかし、皆さんご存知のように、安倍総理の心は現時点で変わっていません。
そんな中、ニューズウィーク日本版が、安倍総理を痛烈に批判する記事を掲載しました。題名は、「基本的人権の理念を捨て、習近平を国賓に迎える安倍政権」です。何が書いてあるのでしょうか?記事はまず、根本的な疑問を提起します。
ウイグル人弾圧、香港抑圧の習近平・独裁体制と「世界平和」を目指す安倍政権は、人権、民主主義の理念を捨てて経済的利益を優先するのか
安倍政権は、「人権、民主主義より金儲けを優先するのか?」という問題提起です。
日中関係・日米関係に何が起きているか全く釈然としない──そう考える米シンクタンク勤務の私の友人が東京に来ていたときに、安倍首相は中国寄りの姿勢を一層強めて見せた。アメリカへの挑戦とも映る日本政府の昨今の動向は決して感情的な「反抗」ではなく、明確な意図に基づいた行動だ、とアメリカの関係筋はみているらしい。
ここ重要です。アメリカは、日本の中国接近を、【アメリカへの挑戦】と見ている。ただ、アメリカ関係筋は、間違っています。
感情的な「反抗」ではなく、明確な意図に基づいた行動だ
この部分。日本には、アメリカに「反抗」する意志も、「明確な意図」もありません。戦略に基づいた行動でもない。ただ、「中国さんが接近したから、日本も仲良くしましょう」ぐらいで、「な~~~~~~~~~~~~にも考えてない」ことは明白です。
昔Z氏という方から、聞かれました。ある行動について、「日本政府は何を考えているんだ、理解できない!」と。それで私は、「何も考えていないですよ。日本政府は何も考えていないことがわかると、日本の動きが全部わかるようになるのです」と何度も説明した。最初Z氏は、「そんなバカな!」というリアクションでした。しかし、しばらくすると、「結局、君のいうことが正しいと思う」といって微笑みました。
そう、日本政府は、何も考えていないので、悪気なくアメリカを傷つける。しかし、アメリカ政府高官は、「何も考えていないはずがない!」と思うので、「日本は明確な意図をもってアメリカに反逆している!」と勘違いする。
しかし、勘違いされても仕方ないでしょう。この件では、圧倒的に安倍政権が悪いです。