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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和弐年(2020)1月7日(火曜日)
通巻6334号
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トルコ軍のリビア派兵は何を意味するのか?
イラン緊張の最悪タイミング。エジプト、UAE、ロシアが反対
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リビアがどうなっているか、じつに日本の関心の埒外にある。
リビアはカダフィ時代に「緑の革命」を標榜し、日本も大手ゼネコン多数が進出してインフラ工事を請け負っていた。こうした関連でリビア内戦のおり(2011年)、日本はカダフィに在日資産3500億円を凍結した。
もっとも積極的にリビアに進出していたのは旧宗主国イタリアではなく、中国だった。内戦勃発直前、中国企業はなんと100件のプロジェクトをリビアで展開していた。労働者3万6000人がリビアにいて、彼らのエクソダスのため、中国は航空機、フェリー、バスをチャーターし、大輸送作戦を展開したことは今も語り草である。
そのリビア、いまでも日量100万バーレルの原油を生産している。バイヤーは、イタリアを筆頭にフランス、EU諸国。。。。。
2011年にカダフィが暗殺され、この国の内戦状態はさらに激化した。
武装勢力が三つ巴の激しい内乱が続いたが、南の砂漠にいた武装勢力は衰退し、2014年になると、西のトリポリ、東のベンガジで武装勢力は二分化された状況となっていた。武器はロシアからも、米国からも、NATOからも。そして謎の経由地を経て中国製武器も大量に見つかっている。
2015年、国連の仲介で西のトリポリ「政府」と東の「ベンガジ政府」を名乗る武装勢力(LNA=ハフタル司令官)が嫌々ながられも、会談に応じた。
とりあえず暫定政権をトリポリに置き、シラージュ政権をリビア合法政権とすることが決められた。これ、国連の決定である。
だがトリポリに陣取るハフタル司令官は納得せず、武闘が再開された。激しい戦闘が繰り広げられ、数千の犠牲が出ている。
トリポリを拠点とするLNAを率いるハフタル司令官は、元カダフィ政権高官(カダフィ政権の参謀総長)だが、意見衝突、アメリカへ亡命していた。
このハフタル司令官の来歴に特異な影がある。CIAが保護し、ハフタルは合計20年間をアメリカで、しかもCIAのお膝元のラングレーで過ごし、リビアに出入りしていた。CIAとの絡みはたびたび指摘されてきた上、子供五人のうち、ふたりは米国籍である。
▲元陸軍元帥、CIAが匿ったハフタル司令官って誰?
ハフタルはフランスで治療を受け、死亡説も流れたが、健在の様子で現在77歳。
この老人将軍、ハフタルを支援するのがエジプト、UAE、そして、フランスが背後に暗躍している。混乱となると、薮からぬぅーと顔を出して、かならず鵺的行動が大好きなプーチンも背後にいる。
ならばトリポリを支援するのは誰か。もちろん国連が認定した合法政権だから、公然とイタリアは支援している。しかしトリポリ政府は武装が脆弱で、いずれ反政府武装勢力を糾合したハフタル司令官に乗っ取られる危険性もなくはない。
もともとリビアは部族国家で、南西部にはベルベル人がいるし、ベンガジは元国王の出身地、トリポリ政府など認める筈がない。
1月4日にはトリポリの陸軍士官学校が襲撃され、28名が死亡した。。
誰が味方で誰が的なのか、昼間であっても裏切り、昨日の友は今日の敵。惨劇があちこちで繰り返され、国連としては安定、妥協を呼びかけるだけ、しかも先週来、国連の関心事はイランに移っている。
この危機にトルコが立ち上がったのだ。
なんとも複雑である。昨日までの構造分析、政治の方程式は通じなくなった。サウジ、UEA、エジプト、露西亜が支援するハフタル武装勢力の頭越しに、エルドアン大統領はトルコ軍をトリポリに向かわせた。トルコ兵の展開が開始された。
トルコの目論見?
じつはトルコはトリポリ沖合に油田の採掘権を有している。
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