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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和元年(2019)12月18日(水曜日)弐
通巻6311号
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ペロシ(下院議長、民主)の「変節」が事態を悪化させたのではないか
「弾劾しない。米国を分裂させるから」としていた彼女がなぜ変節したのだろう?
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2019年3月11日の『ワシントン・ポスト・マガジン』で、インタビューに答えたナンシー・ペロシ下院議長は、「トランプ大統領弾劾の動きには組みしない。証拠も希薄だし、なにより大統領弾劾はこの国を分裂させる」。
ペロシは議長職権でトランプ弾劾決議を取り下げた。三月のことである。
この時点での民主党とリベラル・メディアのトランプ弾劾の根拠は「ロシアゲート」だった。かれらの脳裏をしめるノスタルジア的なロシア封じ込めは、トランプのような現実主義を前にしては古めかしいが、民主党左派は、自らの体質であるファシズム的要素に近似するロシアへの近親憎悪も手伝って、ロシアのプーチンが嫌い。だから難癖をつけたい。
特別委員会が組織され、その長に納まったのはヒラリー陣営の人物ミューラーだった。
そのミューラー委員会が根掘り葉掘りと行った、二年にもわたるロシアゲート調査は、その委員会のメンバーさえ民主党寄りの人選で構成されていたにもかかわらず、しかも、司法省もFBIも民主党に甘い状況下で、報告書は「弾劾するに値する証拠はでなかった」と結論づけた。
あれだけの騒ぎにネズミ一匹でなかったのだ。
一方で、就任以来のトランプは公約を次々と実施してきた。
NAFTA見直し、パリ協定離脱、中国への高関税発動、TPP脱退など、じつはパリ協定離脱が炭鉱街とガス鉱区周辺に労働者を呼び戻し、米国景気を押し上げ、株価は史上空前の高値に押し上げられ、失業率は劇的に改善されていた。
民主党支持者が、トランプ支持に廻るか、あるいはもっと過激な独立党へ、支持の向きを変えていた。とくに黒人の民主党支持率が目に見えて減少し、民主党は慌て始めた。
民主党の極左傾向がむしろ強まったことは、予備選を前にしての大統領選挙事前レースでも、バニー・サンダーズや、リズ・ウォーレンといった社会主義者、リベラル極左への支持が膨らんで、中間穏健派のジョセフ・バイデンを凌いでいる州が多いことでも分かる。
しかし、民主党にとって極左候補では大統領選挙に勝てないことは自覚している。その上、チャンスを窺うブルメンソールが、横合いから民主党の分裂状況を踏まえて、第三党を組織して独立候補で打って出ると、バイデンも負けることは火を見るよりも明らかである。1980年のアンダーソン、92年のロス・ペローの例がある。第三党の立候補は本命を逆に落選させる。
党利党略から、ペロシは別の決断を迫られていた。トランプを押し詰める政治プロパガンダの材料が必要とされた。
▲党利党略から選挙キャンペーンの武器が必要だった
九月下旬、突然降って湧いたのがウクライナ疑惑である。ロシアゲートの類似品で、日本で言うモリカケのでっち上げとそっくりの構造だ、根拠が薄い。いや、薄いどころが、探れば探るほどに、じつはバイデンの息子とウクライナの黒い醜聞が浮上した。バイデンを助ける積もりで弾劾キャンペーンを始めたら、逆方向からブーメランが帰ってきたのだ。
民主党の支持率は過半を割り込んだ。
共和党はむしろロシアゲートの再燃ともいえるウクライナ問題での弾劾を、受けて立った。
共和党が珍しく団結した。共和党は前回2016年の大統領選挙で保守本流はトランプを批判し、ヒラリーを支援した。院内総務のライオンは土壇場までトランプ支持を躊躇い、多くが非協力的という孤立無援のなかでトランプは孤軍奮闘し、ヒラリーに競り勝った。
いまは状況が百八十度異なる。共和党はあげてトランプ支持で団結している。ネオコンの代表と言われ、トランプを毛嫌いしたチェイニー元副大統領さえ、トランプ支持を表明した。
ウクライナ疑惑による弾劾に対してミッチ・マコーネル上院院内総務(共和)は『民主党は不公平だ』とし、下院少数派院内総務のケビン・マッカーシーも「共和党の党の団結は揺るぎない」と、弾劾の動きを排撃する自信を覘かせる。
外野でもスティーブ・バノン(前大統領戦略補佐官)が英紙『ガーディアン』のインタビューに答えて、『共和党は金持ちの党から労働者の党へ変化した』とし、英国の保守党の勝利と並べて、次の予測を語っている(同紙、12月17日)。
ウクライナ疑惑でも、トランプ支持率は不動である。どうやら見えてきた。次の大統領選挙、トランプの圧勝になりそうだ。
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