書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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日本株は、いまからが大勝負期となって日経平均は30倍に
「アホとちゃうか」と無視する投資家が殆どだろう。ところが!!!!
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エミン・ユルマズ『米中新冷戦のはざまで日本経済は必ず浮上する』(かや書房))
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日本の株式市場に大相場がやってきて、株価は向こう40年で30万円になると世紀の大予言。いったい、このような大法螺もしくは世間を驚かせる珍説を吐く「眉唾エコノミスト」って、何もの?
なにしろ令和時代に日経平均は30万円にまで跳ね上がるなどと啖呵を切る予言を誰が信用するのだろう?
というわけで、消費税増税が強行され、景気後退予測が主流の論壇状況を前にすれば、誰もがするように、眉にべっとりと唾をつけて読み出した。
いやはや面白いのだ。
景気判断を企業の盛衰の求め、経営者の質を重視するのはエコノミストの基盤だが、著者がカバーするのはカジノ、ポケモン、日本の浮世絵というジャンルに埋もれたビジネスチャンスであり、投資家があまり関心を抱かない世界である。
日本のエコノミスト、とくに悲観論者が支配的な経済論壇のなかでも、政策的誤謬を指摘する一群の人々にまざって政府への建言に生きがいを見出すエコノミストや学者、最近はMMT理論が流行。なんでもかんでもアメリカの亜流という経済評論家が多い。
他方、少数派の楽観論者も存在しているが、まともな楽観論は、評者(宮?)の見渡すところ、一部から「法螺吹き武者」と呼ばれるドイツ証券出身の武者陵司氏くらいだろう。
そこで著者であるエミン・ユルマズ氏の来歴をあらためると、なんとこの人、トルコからの帰化人。しかも東大に学び生命工学の博士号。日本に帰化して、ながらく野村證券にいて日本株を売ってきたそうな。
惹句に「トルコ出身の天才エコノミスト」と謳われているが、出発が金融工学ではなく生命工学という立脚点に、評者は注目した。それなら相場を長期的スパンで解析してくれるに違いないと思ったのだ。
第一の着眼点はジャポニズムが飛躍株の潮流になるという。
第二にカジノはラスベガスとか、マカオとか治安の良い都市で発達し、マカオが香港の二の舞になるとするなら極東のカジノ・ビジネスは日本に移るだろうとみていること。
第三が香港の國際金融都市機能が失われるのは時間の問題だが、アジアの金融ハブはシンガポールへ移行するかと言えば,NOで、東京であるという。理由は「シンガポールの実質支配層が華僑。要は中華圏」。したがってグローバル・マネーは中国圏を忌避するからだと予測する。とくにこのポイントは評者の認識に通底する。
第四に「ここ三十年、日本は長期の停滞期にあり、若い投資家たちは香港株や中国株に特化していた」。
日本株プロパーはおじいちゃんが主力で引退期にはいり、つぎの若い世代は日本株にもどるというのが新潮流になること。ポケモン、世界一流のウィスキー、欧米で人気がでて日本酒。ゲーム機などでもジャポニズム、そして大きな市場がインドとその先の中東、アフリカにひらけているではないかと注意を喚起する。
しかし、これらは本書の肯綮の一部でしかなく、下記こそが著者の言いたいポイントである。
1878年(明治11年)日本に株式市場が生まれ初値が130円だった。1920年に日本株はピークを打って549円(ただし明治の一株は73・6株に増えているので実際は40406円、42年間に、じつに297倍となった!
戦後の1949年(昭和24年)、日本株は再スタートを切った。初値が172円86銭だった。ピークの平成元年(1989年12月)、バブル絶頂期で、38915円と、40年間で、じつに225倍となっていた。
こうした市場の長期的展望に基づいた歴史データから未来を見渡せば、いまから40年後、日本株は、どう抑制的に見ても30倍になる。それさえ極力控えめの数字である、とするのである。
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● 40年後に日本株は当然30万円はあり得ます。ただし40年間投資できる
人は殆どいないし、その間の株価の変動にも耐えられないでしょうし、
その間の世界や日本の法律や社会変動にも耐えられないでしょう。
● つまり30倍になると分かっていても、それを現実の利益に
結びつけるのは実質的に不可能です。
● 例えば、今から世界的株価の暴落がやってきます。その時の恐怖で株を
手放すでしょう。底では世界的経済の回復に自信がまだ持てません
から、底値ねらいは意外とうまくはいかないものです。
● その底値から、6~10倍前後の株価の上昇は望めます。それは2030年
前後にやってきます。多くの人はその時の熱狂に巻き込まれて
高値で買うでしょう。そしてくる暴落に再び巻き込まれます。
● USA/大西洋資本主義諸国の資本主義の最後のバブル崩壊が待って
いるのです。その時の恐怖で再び株を手放し、大損をします。
16年間に及ぶ大暴落の波に呑まれるのです。
● その資本主義の大崩壊の音と第三次内戦型世界大戦の軍靴の足音とが
同時に聞こえて、未来の株価の事を考えるゆとりはありません。
● さらに同じ株価でも、暴落するものと暴騰するものの入れ替わりが
起こります。言い換えれば戦争に有利な企業の株の暴騰が
起こります。乗り換えは簡単にできるものではありません。
● また戦争経済が近づくと、財産の維持に対する不安や、株の投資に対する
制度などの不安から株は手放ししたくなるでしょう。株を持ち続ける
のは強靭な精神が必要です。政府が制度を変える度に動揺します。
● いずれにしろ、2030年から2046年までの大暴落時に株を持ち続ける
事は事実上、常人には不可能です。
● 世界の大暴落と第三次内戦型世界大戦を乗り切った日本は、再び繁栄と
株価の暴騰が待っていますが、その時には多くの人は年を取りすぎ
さらに暴落のトラウマからの回復もほぼ不可能でしょう。
● USA/大西洋資本主義諸国の崩壊と第三次内戦型世界大戦を乗り切った
日本の繁栄と株価30倍の恩恵は若い世代へとバトンタッチされて、
傷ついた老兵は去ります。
● しかし若い世代が株価に目覚めたときには、すでに株価は数十倍に
暴騰しているときでしょう。高値で株をつかまされて
次の数年での暴落で損をして手放すのが落ちです。
● 40年もじっと株を持続けるには、人生は短くはかないものです。
宝くじと同様、捨てるつもりでないと格式市場へは投資は
できないものです。
● 他人のお金を預かって、そして手数料をもらって、気軽に投資できる
人のみが、儲けることが確実に保障されているのが、市場なのです。
株式市場よりも更にお金を捨てさせられるのが、仮想通貨の世界です。
● これらを承知の上で、まだ見ぬ孫のために、40年間株式市場に
お金を寝かしときますか? 途中で孫の親が・つまり貴方の
子供が株を売り払うかもしれません。それでも・・・。