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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
令和元年(2019)10月5日(土曜日)参
通算第6220号
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やることなすこと全てが裏目。「覆面禁止法」で香港は無政府状態寸前
マハティール首相。「林鄭長官はさっさと辞任するべきだ」。米上院議員も。
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暴力のスパイラルは凶暴化に歯止めがかからなくなり、無政府状態をまねくことになりがちである。いまの香港は、黒社会(マフィア)も驚くほどの無政府的な狂態が局所的に実現している。しかし反政府デモは叫ぶのだ。「暴徒はいない。あるのは暴政だけ」。
覆面禁止法の施行は、まさに暴力の連鎖を呼びこみ、理性は失われた。なんと香港島南部のリゾート地区「アバディーン」地区にまで抗議行動が初めて拡がったのだ。
マハティールは言った。「林鄭長官はさっさと辞任するべきだ」。米下院議長のペロシは「覆面禁止が民衆への回答なの?」。
国連人権委員会は事態の深刻化を注視するとし、EUも香港問題での人権、法治状況に重大な懸念を表明した。静観する日本政府に対して、欧米はそろそろ批判を始めるかもしれない。
リック・スコット上院議員(共和党、フロリダ州選出)は、先週、香港で林鄭月蛾・行政長官と面会した。「私も事態の深刻化を案じています」とした林鄭の発言を、米国議員は人権侵害、民主主義の崩壊を憂慮してのことと受け取った。ところが、帰国して聞いたのは「覆面禁止法」(つまり抗議デモ、集会の禁止)という民主政治に逆行するニュースだった。スコット議員は落胆して言った。「彼女は完全な北京の傀儡人形だ」。
すべての政策発動は裏目にでた。
六月の大規模デモは単なる突発的抗議現象としてしか認識できなかったのだろう。無為無策で過ごすうちに、最初の転機は紅色テロ(7月21日元朗駅)、警察の凶暴化(女子学生が失明)。学生の動きは、このあたりから一気に過激化した。
遅ればせの「逃亡犯条例」撤回は、完全に逆効果となった。アリバイ証明的な住民との対話は偽善の固まりと非難ごうごう。
9月29日「雨傘革命」五周年、10月1日の国慶節に林鄭月峨・行政長官は、いそいそと北京へ飛んで、香港市民が「黒衣日」として習近平を皮肉っているときに、何を入れ智恵されたのか、帰国するなりの「覆面禁止法」発動だった。
親中派議員は歓迎声明。民衆はたちまち随所に集まっての抗議集会、大荒れの乱闘騒ぎは十ヶ所で同時多発。それも恒例の金鐘から銅鑼湾にかけての中央ではなく、屯門、元朗、沙田、太古など、郊外のベッドタウンで起きたことに特色がある。何処でも、いつでもSNAの呼びかけで人があつまる。
禁止令発表直後にはサラリーマンが1000名集まり、チャーター度ガーデンからコノート通りからデボー通りを封鎖しバリケードを築き、警官隊と対峙した。
デモは荒れ狂い、とくに太古駅ではすべての改札が破壊され、広告のガラスケースも粉々に、親中派のスタバや「中国建設銀行」、とくに「中国旅行社」の店舗が破壊され、抗議活動は一段と攻撃的になった。もはや打つ手なし。
元朗では14歳の少年がピストルで狙撃され重体。私服警官が集団に囲まれ、火焔瓶の洗礼を受けて、ピストル片手に脱出したが、途中でピストルを落とし、慌てて戻る光景がカメラに捉えられた。
覆面禁止法を北京は絶賛し「絶対に必要だ」とした。
「覆面がダメなら」と、市民はハロウィンの仮面をつけ、あるいは臨時のムスリムに。
警察幹部ですら「風邪を引いた人のマスク、病人でマスクが必要な人もいる。この緊急法は意味がない。事態を悪化させるだけだ」と嘆く有様となった。
▲李嘉誠、香港の実業界救済に150億円を拠出へ
李嘉誠は私財1億香港ドル(150億円)を「李嘉誠財団」を通じて、被害の著しい観光産業などに寄付すると会見した。政府の救済資金で不足分を補完するという。
観光産業から小売り等、売り上げが8−9割落ち込み、プラダは撤退。デモ集結地点のショッピングモール、デパートなどは営業を取りやめ、ガラスケース保護などの防衛策を講じたが後の祭り。とくに親中派のマキシム集団が経営するスタバ、おなじく経営トップが親中発言をして反政府活動家から狙われた吉野屋、巻き添えで元気寿司も襲撃を受けた。
▲習近平は人民解放軍の突入を決断するか
残された選択肢は何か?
第一はデモ隊の要求を呑んで妥協することだろう。しかしながら香港政庁には決定権がなく、逐一北京の最終判断を仰ぐことになり、事態の早期収拾はのぞむべくもない。暴力の悪政のスパイラルが続くだろう。
第二は事実上の戒厳令を施行し、一度は議会人が反対した「夜間外出禁止令」。
これは熱帯にある香港のビジネスアワーとの兼ね合いが微妙で、涼しくなってから外へ出る市民が多いのだ。これもまた裏目に出る可能性が高く、抗議側は新手を繰り出して対抗することになるだろう。
第三は、中国軍の介入である。
「第二の天安門事件」になれば、中国の孤立、世界からの制裁は避けられず、となるとデフォルト寸前の銀行や社債が償還できなくなり、中国経済は奈落へ落ちることになる。香港の國際金融投資の機能が崩れ去ると、中国はいったい國際的な商活動をどうするのか。
或いは、トルコの軍事クーデター未遂事件のように、SNAの呼びかけで市民が街に飛び出して戦車に立ちはだかれば、はたして軍は市民に発砲できるだろうか?
というシナリオを想定すれば、習近平はおいそれと軍隊の香港投入は出来ないだろうと考えられる。
しかしなぜ高度な自治を保障された香港に、中国人民解放軍が駐屯しているのか、その法的淵源は何かと言えば、「一国両制度」とは言いながらも、基本法には「外交と防衛は中国が行う」という条項が挿入されているからである。
しかも香港行政長官は地元民が選ぶ制度にはなっているものの、「中央政府が任命」と規定されている。北京の承認がなければ、たとえ香港議会が長官を選んでも拒絶されることになり、したがって現在の林鄭月峨は「北京の操り人形」を言われるのである。
香港に駐屯している人民解放軍は、混成歩兵旅団、空挺大隊、陸軍兵士六千(現在一万に増強)、小型艦艇六隻、ヘリ12機、戦闘機四機と一箇空挺団などからなり、南部戦区から派遣されている。直近の情報では駐在兵士が6000から一万二千人へ増強されているという。
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大陸は・戦士戦国時代。右も左も最終的には武力で決める。これが2180年迄続く。
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