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香港の影。       資本主義の崩壊。

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
令和元年(2019)10月 5日(土曜日)
         通算第6218号  <前日発行>
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 香港大乱の舞台裏で展開されている江沢民 vs 習近平の暗闘
  利権争奪のダークサイド。「港人治港」の実態は「財閥治港」だった
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 香港の産業構造の特徴はと言えば、まず金融と不動産、そして観光業を含むサービス産業である。農業、漁業、林業の第一次産業は人口の1%以下。しかし香港全土の土地利用では9%が農地あるいは林野、湿地である(主に新界に拡がる農地だけで1000ヘクタール)。

 なにしろ狭い土地ゆえに、必然的に高層マンション、摩天楼の林立となる。根幹にあるのは土地代の高さ。しかも土地の開発許可権は香港政庁が握っている。汚職の温床は、ここにある。

香港の最高税率は16・5%、しかもVAT(付加価値税)はない。すると香港政庁の歳入は何がささえているか。土地売却代金と不動産取引税の収入印紙で、歳入の33%という偏在ぶり。昨年の歳入は6000億ドルだった。
ところが2016年六月からの香港大騒擾以来、2019年上半期の歳入が42%の急減をみている。
不動産取引が減ったからだ。街を歩いて驚くのは不動産斡旋業の店頭を飾る物件案内。なんと海外不動産を売っている。日本のマンションも大量に、ここで取引されている!

 1996年、香港返還の前年だが、江沢民の元に密使が飛んだ。初代行政長官は董建華(香港海運のボス)がもっともふさわしいとの推薦書には、香港財閥トップの李嘉誠とCITICを立ち上げた大物=栄智健が連署していた。 
 江沢民は1997年の香港返還式典のあとも、98年と2001年に香港を訪問し、そのたびごとに李嘉誠と食事している。李の息子たちヴィクターとリチャードも陪席している。


 ▲香港警察は悪の巣窟とも言われた

 悪名高い九龍城があった時代。暗黒街にマフィアがはびこり、警察はマフィアと連み、悪の温床と言われ庶民の怨嗟の的だった。ちょうど、現在の中国の警察と似ている。「お巡りさん、有り難う」などという日本人の感覚でいたら、この感覚は分からないだろう。だから悪をやっつけるブルースリーやジャッキーチェンの映画が大ヒットし、庶民は溜飲を下げたのだ。

 香港の土地払い下げを巡る醜聞は英国総督時代からかわらず、宝くじで一等当選(当時の賞金は三億円だったと記憶する)は、なぜか総督が当選する仕組みだという噂を聞いたことがある。
ダークマネーを、こうやって洗浄し、公的な収入としていたと香港の情報数はいうが、検証された話ではなく、香港政治の本質を衝く逸話として受け取った。この話は1970年代初頭の頃、筆者は貿易に従事していたので、毎月のように香港へ行っていた。おりしも、伊達政宗十六代末裔の伊達政之氏が山林道(サムラムロー)で日本語学校を経営されていた。よく伊達さんのところへ行って雑談に興じたことを思い出した。

香港のマンションがなぜ世界一高いのか。それは土地分譲があまりにも高価であり、マンション代金の半分は土地代、残りの三割が建設費。二割がデベロッパーの荒利で、ここから広告宣伝費、販売手数料、店舗維持と販売員の給与が賄われる。この単純明快な図式から歴然となるのは土地の払い下げが最大最強の利権である事実だ。

現在、香港の四大不動産王とは李嘉誠率いる長江集団。郭兄弟の「新鴻基(サンホンカイ)」。李兆基がひきるヘンダーソンランド、そして鄭裕純の新世界集団(デパート、フェリー、周大福も含む)である。ちなみに李嘉誠の長江集団と和記(ハッチソン・ワンポア)、息子らの通信企業(PCCWなど)の総体で、香港株式市場時価総額の30%をしめる。余談だが、李兆基と、新世界先代社長の鄭裕トウに20年ほど前に筆者はインタビューしたことがある(詳細は拙著『チャンスとリスク』、二見書房)。

四大不動産王が香港のGDPにしめるシェアは五割近い。ジニ係数が0・54のからくりだ。
ということは、いかに香港の経済構造が偏在的であり、換言するなら香港人が政治を治めているのではなく(港人治港)、財閥が舞台裏で政治を壟断していること(財閥治港)にならないか。

 香港財界で「江沢民派」を代表した李嘉誠ゆえに、習近平時代となれば、ビジネスの手じまいを急ぐのだ。中国大陸の物件は五年も前から、李はあらかた売却した。
いや、香港ですらマンション開発に意欲を見せず、プロジェクトの大半を英国と欧州に移管している。この現実は、習近平派が香港利権を狙い、李嘉誠ら旧江沢民派の排斥を始めたことを意味する。

 総攬的にみると、江沢民と胡錦涛の二十年間は香港財界と中国共産党との蜜月だった。香港返還は円滑にすすみ、江沢民・胡錦涛の二十年間、香港に激甚なる波乱はなかった。胡錦涛時代の十年というのは江沢民の「院政」である。
 雨傘革命は2014年、習近平が政権を取って、香港に睨みをきかせ始める時期と重なることに留意するべきだろう。


 ▲若者の不満を政治は吸収できなかったのだ

 サウスチャイナ・モーニングポストの世論調査(2019年10月2日)に拠れば、香港住民の84%が林鄭月峨行政長官を「無能」とし、同時に58%が、住宅問題で不満を抱いていることが分かった。

 歴代の香港政庁は住宅問題解決のため、公共住宅の供給を謳ったが、2006年から2016年までに供給された公共住宅は、僅かに25700戸だった。申請者は26万余、不満が募るのは当然の流れとなる。

 住宅の事情を分かりやすくみよう。
 「単房」というのは米国流のスタジオタイプ、日本で言うlDK(単身赴任か独身者用)。シャワーとトイレにしきりはなく、ベッドは折りたたみ式。冷蔵庫は格納され、台所は狭窄の限界。だから家具を置けない。折りたたみの机でインターネットに興じるくらい。
 それでも住宅賃貸料は収入の六割を占め、残りのカネでネット代を支払うと、食事に費やせるカネは、いくら?(ま、日本の事情も似たようなものだが)。

 統計に拠れば香港住民750万人のうち、137万人が月収500ドル以下で暮らすという。関連して思い出すのは朝六時台に下町の油麻地、旺角、太子あたりから地下鉄に乗ると、乗客の身なりが違う、労務者、工員、日雇い。眼光に活気がなく、猫背気味で、悄然と職場にかよう風景があった。それが7時台となると元気のよいサラリーマン。OLが通勤のために郊外から都心へ乗り込んでくる。

 くわえて高校も大学も私学が多いので学費が高い。外食は出来ない。ファッションも買えない。ようやく大学を出ても、よき職場は狭き門。将来に絶望して、民主化運動発生以来、九月までにも、十名の自殺が出ているという。

 なぜ若者達があれほどの反対運動を展開し、いのちがけで戦っているのか。その原因が奈辺にあったか、ダークサイドを観察すると、表面では見えなかったあるものが見えてくるのである。
      □△○み△□△○や△△○ざ◎△□○き□△□


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