★ http://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/f2457cf4eeb4b1d2264592ed04c3b1e8 から転載
ロジャバ革命の命運(5)
2017-10-22 21:47:52 | 日記・エッセイ・コラム
ロジャバ革命の命運について一生懸命考えているうちに、このシリア戦争(何度も言いますが、これはシリア国内の内戦ではありません)の結末がどちらに転ぶにせよ、世界史的に大きな意義をもつ十年戦争(まだ七年ですが)であることが、実にはっきりと見えてきました。もし、現在の時点での劣勢にもかかわらず結局は西欧側(はっきり言えば米国とイスラエル)が勝つとすれば、事の始まりにロジャバのクルド人が発心し、私もその成就を祈った「ロジャバ革命」は夢と消えるでしょう。しかし、もしアラブ側(簡単に言えばシリア、イラン、そしてロシア)が究極的に勝利を収めれば、ロジャバ革命が現実のものとなる日がやがて訪れることも夢ではないと、私は考えるようになっています。
このシリア戦争は、米国側が錦の御旗として掲げる「テロとの戦い」の残忍極まりない戦略の実態が極めて具体的に露呈され、硬い歴史的事実として記録されつつあるという点で、大きな世界史的意義を持つに違いありません。その戦略の実態の経時的な鳥瞰図を私流の簡単化した言葉で描き出す作業を続けながら、私は、絶えず、『ロジャバ革命の命運(3)』の末尾に掲げたアンドレ・ヴルチェクの至言を思い出しています:
********************
<アンドレ・ヴルチェク>
・・・・・概して欧米、とりわけアメリカ合州国は、自分たちが何をしているのか十分承知しているのはほぼ確実だと思います。アメリカには最も邪悪な植民地大国、特にイギリスが顧問として、ついているのです。アメリカは、必死に戦わずに没落することは決してなく、ヨーロッパとて同じです。世界の中の、この二カ所は、世界をひどく略奪することによって、築かれてきたのです。連中は今もそうです。彼らは自分の智恵と努力だけで自らを維持することはできません。連中は永遠の盗人です。
アメリカは決してヨーロッパから別れられません。アメリカは、ヨーロッパの植民地主義、帝国主義と人種差別という木の恐るべき幹から別れ生えた、巨大な枝に過ぎません。アメリカ、ヨーロッパとNATOが現在行っていることが何であれ、見事に計画されています。決して連中を見くびってはいけません! 全て残虐で陰険で凶悪な計画ですが、戦略的視点から見れば、実に素晴らしいものです! しかも連中は決して自ら立ち去ることはありません! 連中とは戦って、打ち負かすしかありません。そうでない限り、連中はずっとい続けます。アフガニスタンであれ、シリアであれ、どこであれ。
********************
イスラム國(IS,ISIS,ISIL,DAESH, ..)については、世界中であらゆる形の解説、報道が行われています。その全貌が正確な事実の形で確かめられ、それが歴史として詳細に残されることは望むべくもありますまい。悪名高い米国のCIAについても全く同じことが言えましょう。CIAが米国という国の本質を最も端的に担っている存在であることは殆ど誰もが感じ取っていることでしょうが、その個々の行動が具体的に確認された事実として明るみに出て記録されているわけではありません。
米国(そして、西欧、イスラエル)の世界制覇の道具、手段(instrument, tool)としてISが使われている事態が具体的に白日のもとに曝されることが起これば、それは貴重な機会です。その具体的事実とは、前回のブログでも述べたように、「シリア戦争ではイスラム国軍を指揮している幹部は米軍の統率下にあり、シリアの北部と東部(ラッカ、デリゾール)ではSDFとISは両方とも米国の代理地上軍である」という事実です。この事実を伝える報道源は多数あり、前回にも私の信頼するPaul Craig Robertsの発言を紹介しました。
しかし、この事実の確認は、プーチンその人を含むロシアの要人達の公式の発言から取ることができます。国家元首としてのプーチンの最近の発言には外交的な丁重さの絹を着せてありますが、「シリアでISは軍事勢力として米国軍の統率下にある」と指摘していることは明々白々です。シリアだけではありません。イラクは勿論、世界の他の地域でもISは米国の世界制覇の極めて有効な道具として機能しているのです。最近(10月18日)アフガニスタンの元大統領カルザイも「米国は、アフガニスタン全域の不安定化を目指して、ISを道具として使っている」とはっきり発言しています:
https://www.rt.com/news/407134-isis-afghanistan-us-tool-karzai/
ひとたびこの事実、つまり、「米国はISを道具として使っている」という事実がはっきりと確かめられたとなると、これまで中東で、特にイラクとシリアの紛争で、イスラム國(IS,ISIS,ISIL,DAESH, ..)の軍事勢力が果たしてきた役割をたどって、もう一度そのカラクリと意義を読み直すことが出来ます。
米国が国際的テロ組織を世界圧政の道具として使用してきた経過を論じるにはウサマ・ビンラーディンのアルカイダまで遡るべきですが、以下では、2011年のシリアでの「アラブの春」の始まりのあたりから話を始めます。「自国民に暴虐の限りを尽くす独裁者カダフィ」の政権を打倒した場合と同様、「悪逆の独裁者アサド」の政権に攻撃を仕掛ける以前から、シリア人の反アサ政治勢力を買収的に組織し、それを支援する形で米国を主体とする「有志連合」の軍事力が形成されました。したがって、シリアでは「アラブの春」が若者たちの平和的な反政府デモから始まり、それをアサド政府が暴力的に鎮圧したと考えるのは正しくありません。
反政府運動は初めから本質的に計画的かつ暴力的であったのであり、それに対してアサド政府も暴力で対処したというのが真実です。しかし、クルド人が多数派を占めるシリア北部のシリア・トルコ国境沿いのロジャバ地区での革命的な反政府運動については例外的な状況が生じました。ごく僅かな武力衝突が生じただけで、アサド政府はロジャバ地区の支配をクルド人に明け渡し、一方、ロジャバ革命組織はアサド政権打倒を目指す米国主導の自由シリア軍とは行動を共にせず、2014年1月には革命を宣言し、アフリン、コバニ、ジャジーラの三つのカントンで、以前のブログ記事で紹介した「ロジャバ憲法」を布告しました。この時点では、ロジャバ革命の戦士たちは、思想的にも心情的にも米国の帝国主義に反対の立場にあった筈です。ところが、2014年9月、重装備の恐るべきIS軍がロジャバ革命の中核コバニ市に対して猛攻撃を掛けてきました。
イスラム國(IS,ISIS,ISIL,DAESH, ..)の起源はアフガン戦争にまで遡るとされていますが、イラクでISが急激に勢力の拡大を開始して、2014年6月、あっけなく北部の重要都市モスルを攻略し、敗走したイラク国軍の残した戦車を含む大量の武器弾薬を手に入れた時点で、すでに「米国の中東戦略の道具」と化していたと考えて間違い無いでしょう。ISIS軍に加えて、バルザニ大統領支配下のイラク・クルディスタン自治区の民兵軍団ペシュメルガ、それに勿論、米国子飼いのイラク国軍も、米国の中東制覇のための道具として操作されることになります。
米国とイスラエルが操るこの三匹の猿が演ずる大掛かりな猿芝居の開演です。モスルを攻略したISISは勢いに乗じてイラク北部の油田都市キルークークも占領しますが、“勇猛な”クルド民兵軍団ペシュメルガによって奪還され、キルクーク産の石油はイスラエルの石油需要の大半を満たすことになります。ISISの方は、イラクに隣接するシリア東部のデリゾールとそこから北西に連なるラッカに至るシリアの油田地帯を急速に制圧して、自家用と輸出用の石油資源を手に入れ、続いてラッカの北に位置するコバニ市の猛然と襲いかかりました。シリアとトルコの国境線の中程に位置する小都市コバニ(アイン・アルアラブ)をめぐるクルド人民兵部隊(YPGとYPJ)とIS軍との死闘は、結局クルド軍側の勝利で終わり、これを機会に米国はシリア侵略の代理地上軍の代表をISIS軍からクルド人軍団に切り替えますが、そのあとも米国はクルド人軍団とISIS軍の両方を巧みに操り続けます。次回はこのコバニ攻防を中心にして話を進めます。
「米国とイスラエルが操るこの三匹の猿が演ずる大掛かりな猿芝居」という私の見解があまりにも荒唐無稽だと思われる読者のために、『マスコミに載らない海外記事』に出た記事「ISISとSDFというアメリカの大ウソ-‘クルディスタン’と新たなガス戦争」(2017年10月4日)の一部を転載させていただきます:
**********
最近の主要欧米マスコミの見出しは、シリアのデリゾール県周辺の主要天然ガス田攻略を、あたかも、それがシリアの勝利であるかのごとく称賛している。典型的な見出しはこうだ。“SDF、シリア・ガス田をISISから奪還。”本来のガス田所有者、シリア国が貴重な経済的資源を、ISISテロリストから奪還するのに成功したことを意味する単語“奪還”に注目願いたい。
現実には、逆なのだ.
ダマスカスのアサド政権ではなく、ペンタゴンとイスラエルIDFや他のバッシャール・アル・アサドのダマスカス政権に敵対的な連中に支援されているクルド・シリア民主軍(SDF)が、元々テキサス州ヒューストンのコノコ石油が開発したシリアの主要ガス田を支配したと発表したのだ。作戦に関する欧米マスコの標準的な報道は、“アメリカが支援するシリア部隊が、石油の豊富なガス田地域のコノコ・ガス工場を「イスラム国」から奪い、過激派戦士から重要な収入源を奪った”という線に沿っている。
この描写の背後には、アメリカ・ペンタゴン部隊が、ISISテロ集団とSDFの両方の導き手であることが露顕した醜い真実がある。2014年以来、ISISがデリゾール県と、その石油とガス田を占領し、アサド政府から収入とエネルギーの主要源の一つを奪っていたのだ。
9月24日、ロシア国防省が、都市デリゾールの北、ISIS戦士が配備されている場所の、アメリカ軍特殊部隊の機器を示す航空写真を公開した。写真は、アメリカ軍部隊が、クルド・シリア民主軍(SDF)の自由通行を認めて、「イスラム国」テロリストの戦闘隊形を通り抜けることを可能にしている、とロシア国防省は声明で述べている。
“ユーフラテス川左岸沿いにデリゾールに向けて、ISIS戦士による抵抗無しに、SDF軍部隊は移動している”と声明にある。
モスクワ国防省声明は更にこうある。“アメリカ軍の拠点が、ISIS部隊が現在配備されている場所にあるにもかかわらず、戦闘前哨基地が組織されている兆しさえない。”明らかに、アメリカ軍要員は、ISISが支配する領土の真ん中で、絶対安全と思っているのだ。
**********
藤永茂(2017年10月22日)
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
ロジャバ革命の命運(5)
2017-10-22 21:47:52 | 日記・エッセイ・コラム
ロジャバ革命の命運について一生懸命考えているうちに、このシリア戦争(何度も言いますが、これはシリア国内の内戦ではありません)の結末がどちらに転ぶにせよ、世界史的に大きな意義をもつ十年戦争(まだ七年ですが)であることが、実にはっきりと見えてきました。もし、現在の時点での劣勢にもかかわらず結局は西欧側(はっきり言えば米国とイスラエル)が勝つとすれば、事の始まりにロジャバのクルド人が発心し、私もその成就を祈った「ロジャバ革命」は夢と消えるでしょう。しかし、もしアラブ側(簡単に言えばシリア、イラン、そしてロシア)が究極的に勝利を収めれば、ロジャバ革命が現実のものとなる日がやがて訪れることも夢ではないと、私は考えるようになっています。
このシリア戦争は、米国側が錦の御旗として掲げる「テロとの戦い」の残忍極まりない戦略の実態が極めて具体的に露呈され、硬い歴史的事実として記録されつつあるという点で、大きな世界史的意義を持つに違いありません。その戦略の実態の経時的な鳥瞰図を私流の簡単化した言葉で描き出す作業を続けながら、私は、絶えず、『ロジャバ革命の命運(3)』の末尾に掲げたアンドレ・ヴルチェクの至言を思い出しています:
********************
<アンドレ・ヴルチェク>
・・・・・概して欧米、とりわけアメリカ合州国は、自分たちが何をしているのか十分承知しているのはほぼ確実だと思います。アメリカには最も邪悪な植民地大国、特にイギリスが顧問として、ついているのです。アメリカは、必死に戦わずに没落することは決してなく、ヨーロッパとて同じです。世界の中の、この二カ所は、世界をひどく略奪することによって、築かれてきたのです。連中は今もそうです。彼らは自分の智恵と努力だけで自らを維持することはできません。連中は永遠の盗人です。
アメリカは決してヨーロッパから別れられません。アメリカは、ヨーロッパの植民地主義、帝国主義と人種差別という木の恐るべき幹から別れ生えた、巨大な枝に過ぎません。アメリカ、ヨーロッパとNATOが現在行っていることが何であれ、見事に計画されています。決して連中を見くびってはいけません! 全て残虐で陰険で凶悪な計画ですが、戦略的視点から見れば、実に素晴らしいものです! しかも連中は決して自ら立ち去ることはありません! 連中とは戦って、打ち負かすしかありません。そうでない限り、連中はずっとい続けます。アフガニスタンであれ、シリアであれ、どこであれ。
********************
イスラム國(IS,ISIS,ISIL,DAESH, ..)については、世界中であらゆる形の解説、報道が行われています。その全貌が正確な事実の形で確かめられ、それが歴史として詳細に残されることは望むべくもありますまい。悪名高い米国のCIAについても全く同じことが言えましょう。CIAが米国という国の本質を最も端的に担っている存在であることは殆ど誰もが感じ取っていることでしょうが、その個々の行動が具体的に確認された事実として明るみに出て記録されているわけではありません。
米国(そして、西欧、イスラエル)の世界制覇の道具、手段(instrument, tool)としてISが使われている事態が具体的に白日のもとに曝されることが起これば、それは貴重な機会です。その具体的事実とは、前回のブログでも述べたように、「シリア戦争ではイスラム国軍を指揮している幹部は米軍の統率下にあり、シリアの北部と東部(ラッカ、デリゾール)ではSDFとISは両方とも米国の代理地上軍である」という事実です。この事実を伝える報道源は多数あり、前回にも私の信頼するPaul Craig Robertsの発言を紹介しました。
しかし、この事実の確認は、プーチンその人を含むロシアの要人達の公式の発言から取ることができます。国家元首としてのプーチンの最近の発言には外交的な丁重さの絹を着せてありますが、「シリアでISは軍事勢力として米国軍の統率下にある」と指摘していることは明々白々です。シリアだけではありません。イラクは勿論、世界の他の地域でもISは米国の世界制覇の極めて有効な道具として機能しているのです。最近(10月18日)アフガニスタンの元大統領カルザイも「米国は、アフガニスタン全域の不安定化を目指して、ISを道具として使っている」とはっきり発言しています:
https://www.rt.com/news/407134-isis-afghanistan-us-tool-karzai/
ひとたびこの事実、つまり、「米国はISを道具として使っている」という事実がはっきりと確かめられたとなると、これまで中東で、特にイラクとシリアの紛争で、イスラム國(IS,ISIS,ISIL,DAESH, ..)の軍事勢力が果たしてきた役割をたどって、もう一度そのカラクリと意義を読み直すことが出来ます。
米国が国際的テロ組織を世界圧政の道具として使用してきた経過を論じるにはウサマ・ビンラーディンのアルカイダまで遡るべきですが、以下では、2011年のシリアでの「アラブの春」の始まりのあたりから話を始めます。「自国民に暴虐の限りを尽くす独裁者カダフィ」の政権を打倒した場合と同様、「悪逆の独裁者アサド」の政権に攻撃を仕掛ける以前から、シリア人の反アサ政治勢力を買収的に組織し、それを支援する形で米国を主体とする「有志連合」の軍事力が形成されました。したがって、シリアでは「アラブの春」が若者たちの平和的な反政府デモから始まり、それをアサド政府が暴力的に鎮圧したと考えるのは正しくありません。
反政府運動は初めから本質的に計画的かつ暴力的であったのであり、それに対してアサド政府も暴力で対処したというのが真実です。しかし、クルド人が多数派を占めるシリア北部のシリア・トルコ国境沿いのロジャバ地区での革命的な反政府運動については例外的な状況が生じました。ごく僅かな武力衝突が生じただけで、アサド政府はロジャバ地区の支配をクルド人に明け渡し、一方、ロジャバ革命組織はアサド政権打倒を目指す米国主導の自由シリア軍とは行動を共にせず、2014年1月には革命を宣言し、アフリン、コバニ、ジャジーラの三つのカントンで、以前のブログ記事で紹介した「ロジャバ憲法」を布告しました。この時点では、ロジャバ革命の戦士たちは、思想的にも心情的にも米国の帝国主義に反対の立場にあった筈です。ところが、2014年9月、重装備の恐るべきIS軍がロジャバ革命の中核コバニ市に対して猛攻撃を掛けてきました。
イスラム國(IS,ISIS,ISIL,DAESH, ..)の起源はアフガン戦争にまで遡るとされていますが、イラクでISが急激に勢力の拡大を開始して、2014年6月、あっけなく北部の重要都市モスルを攻略し、敗走したイラク国軍の残した戦車を含む大量の武器弾薬を手に入れた時点で、すでに「米国の中東戦略の道具」と化していたと考えて間違い無いでしょう。ISIS軍に加えて、バルザニ大統領支配下のイラク・クルディスタン自治区の民兵軍団ペシュメルガ、それに勿論、米国子飼いのイラク国軍も、米国の中東制覇のための道具として操作されることになります。
米国とイスラエルが操るこの三匹の猿が演ずる大掛かりな猿芝居の開演です。モスルを攻略したISISは勢いに乗じてイラク北部の油田都市キルークークも占領しますが、“勇猛な”クルド民兵軍団ペシュメルガによって奪還され、キルクーク産の石油はイスラエルの石油需要の大半を満たすことになります。ISISの方は、イラクに隣接するシリア東部のデリゾールとそこから北西に連なるラッカに至るシリアの油田地帯を急速に制圧して、自家用と輸出用の石油資源を手に入れ、続いてラッカの北に位置するコバニ市の猛然と襲いかかりました。シリアとトルコの国境線の中程に位置する小都市コバニ(アイン・アルアラブ)をめぐるクルド人民兵部隊(YPGとYPJ)とIS軍との死闘は、結局クルド軍側の勝利で終わり、これを機会に米国はシリア侵略の代理地上軍の代表をISIS軍からクルド人軍団に切り替えますが、そのあとも米国はクルド人軍団とISIS軍の両方を巧みに操り続けます。次回はこのコバニ攻防を中心にして話を進めます。
「米国とイスラエルが操るこの三匹の猿が演ずる大掛かりな猿芝居」という私の見解があまりにも荒唐無稽だと思われる読者のために、『マスコミに載らない海外記事』に出た記事「ISISとSDFというアメリカの大ウソ-‘クルディスタン’と新たなガス戦争」(2017年10月4日)の一部を転載させていただきます:
**********
最近の主要欧米マスコミの見出しは、シリアのデリゾール県周辺の主要天然ガス田攻略を、あたかも、それがシリアの勝利であるかのごとく称賛している。典型的な見出しはこうだ。“SDF、シリア・ガス田をISISから奪還。”本来のガス田所有者、シリア国が貴重な経済的資源を、ISISテロリストから奪還するのに成功したことを意味する単語“奪還”に注目願いたい。
現実には、逆なのだ.
ダマスカスのアサド政権ではなく、ペンタゴンとイスラエルIDFや他のバッシャール・アル・アサドのダマスカス政権に敵対的な連中に支援されているクルド・シリア民主軍(SDF)が、元々テキサス州ヒューストンのコノコ石油が開発したシリアの主要ガス田を支配したと発表したのだ。作戦に関する欧米マスコの標準的な報道は、“アメリカが支援するシリア部隊が、石油の豊富なガス田地域のコノコ・ガス工場を「イスラム国」から奪い、過激派戦士から重要な収入源を奪った”という線に沿っている。
この描写の背後には、アメリカ・ペンタゴン部隊が、ISISテロ集団とSDFの両方の導き手であることが露顕した醜い真実がある。2014年以来、ISISがデリゾール県と、その石油とガス田を占領し、アサド政府から収入とエネルギーの主要源の一つを奪っていたのだ。
9月24日、ロシア国防省が、都市デリゾールの北、ISIS戦士が配備されている場所の、アメリカ軍特殊部隊の機器を示す航空写真を公開した。写真は、アメリカ軍部隊が、クルド・シリア民主軍(SDF)の自由通行を認めて、「イスラム国」テロリストの戦闘隊形を通り抜けることを可能にしている、とロシア国防省は声明で述べている。
“ユーフラテス川左岸沿いにデリゾールに向けて、ISIS戦士による抵抗無しに、SDF軍部隊は移動している”と声明にある。
モスクワ国防省声明は更にこうある。“アメリカ軍の拠点が、ISIS部隊が現在配備されている場所にあるにもかかわらず、戦闘前哨基地が組織されている兆しさえない。”明らかに、アメリカ軍要員は、ISISが支配する領土の真ん中で、絶対安全と思っているのだ。
**********
藤永茂(2017年10月22日)
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////