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Channel: 歴史と経済と医療の未来予測・歴史経済波動学
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悪夢から寝覚めるとき//{コレステロール=悪魔}仮説の悪夢から

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薬のチェック。The Informed Pressciber. Editorial.   No69 Vol.17 Jan.2017 から

そもそも、薬物治療をはじめ医療による介入は、病気の危険因子(例えば著しい高血圧や
高血糖)があり、薬剤でその危険因子を軽減し寿命が延長する事が確認されてはじめて
有用である。

しかし世の中は、それとはまったく異なる方向に突き進んでいるようだ。その顕著な例が、
「コレステロール仮説」に則った心血管疾患の予防の試み。「コレステロール仮説」と
いうより、
「コレステロール魔物」仮説の方が適切であろう。体に必須のコレステロール
を、魔物のごとく扱い徹底的に取り除こうとする。コレステロールは魔物どころか、
身体にとって必須の物質である。

総コレステロールが高い人の方が長生きであることは、かなり知られるようになり、最近では、
LDL-コレステロールいわゆる「悪玉」も高い人の方がむしろ長生きである事が、多くの疫学調査で
報告されてきた。特に60歳以上ではほぼ例外なくいえる事が、2016年6月に発表された
システマチックレビュー論文で報告された。発表月から5か月間連続してBMJOpen誌最もよく
読まれた論文である。この問題に対する関心の高さを物語っている。要約を本誌(12頁)で紹介している。

他方、「コレステロール=魔物」仮説を主張する学者からは、この論文への猛反撃が多数なされている。
その最たるものが、欧州心臓学会と欧州動脈硬化学会(ESC/EAS)のガイドラインだ。心疾患が
高リスクの場合には、LDL-コレステロール」を70㎎未満に、または、もともとが80㎎~135㎎/dL
の人は、半分以下に下げるべし、とした。

今号で扱った、PCSK9阻害剤(8頁、エボロクマブ、アリロクマブ)やCETP阻害剤(12頁、)なお、全くの新規の作用機序をもつ
コレステロール低下剤の開発に合わせるように「コレステロール=魔物説」扱いは激しさを
増している。エボロクマブ等の臨床試験で、LDL-コレステロール」が元の値の30~40%に低下に
低下し、25㎎/dL以下になる例が多数あった。一般臨床医は、いくら下げてもよい、と考えて
しまうだろう。

家族性高コレステロール血症(FH)の人が心筋梗塞になりやすいのは、コレステロールが高いため
ではなく、TNF-αなどの炎症性サイトカインを高誘導し炎症をおこしやすい遺伝素因を有する為だ
と判明している。この素因は、FHの人が感染症にかかり難い要因でもある。

害のほうが大きい物質(エボロクマブなど)に1回2.3~7万円、年間30~180万円を使う価値はあるのか?

「コレステロール=魔物」仮説の悪夢から目覚めないと、とんでもないことが起こるのではないかと危惧する。

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