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Channel: 歴史と経済と医療の未来予測・歴史経済波動学
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独裁国家の定義。”国家の金は俺の物” と嘯ける国。

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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和2年(2020)11月18日(水曜日)
        通巻第6704号   
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 「夢は儚く消えて」、マラッカ開発のカネは消えてしまった
マレーシアの目玉「一帯一路」プロジェクトも行方不明
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 ラジブ政権時代にマレーシアは中国と締結した「一帯一路」関連の大プロジェクトは、新幹線のほかに、もう一つあった。交通の要衝=マラッカ州に大きな人口島を三つ造成するという壮大なプランで、投資総額は105億ドル。2017年に締結された。

人工島をそれぞれ橋梁で繋ぎ、貿易のコンテナターミナルに加えて、一大エコシティを出現させようという、夢のような、世紀のプロジェクトだった。

この「マラッカ・ゲートウェイ」と呼称されたプロジェクトの合計面積は274ヘクタール(2740000平方キロ)。大型フェリーが寄港できるターミナル。その回りに巨大娯楽施設、豪華ホテル、別荘群。シッピングアーケード。ドバイの七つ星ホテルを越える高層ビルにタワマン。。。。。。。

ラジブ時代に中国が提案したのはマレーシア北東海岸部からクアラルンプールを経由して西海岸マラッカからシンガポールへと南下する新幹線プロジェクトだった。マハティール首相が政権を奪回後、新幹線プロジェクトの八割を撤回、首都近辺だけに縮小した。

ラジブ政権は60億ドル前後のファンドを創成したが、巨額資金は「蒸発」していた。ファンド起債の幹事役だったゴールドマンサックスは出資したサウジなどから訴えられ、25億ドルの罰金を支払うこととなった。

中国主導の民間プロジェクトも巨大だった。シンガポールとの国境海域ジョホールバルの西側の沖合に人工島を造成し、「フォレストシティ」という一大マンションタウンを造るプロジェクトである。

途中まで建設は進み、二万戸近いマンションはすでに売却済み。購入した80%が中国人だった。
マハティール首相(当時)は、マンションを購入したら特権で居住ヴィザを出すとした特典を廃止した。このため華僑の投資は挫折した。

人工島「フォレストシティ」へは橋梁も完成し、ホテルも二軒ほどが開業していた。タワマンも数棟が立って売り出された。
この時点で、マハティールは「あそこ(フォレストシティ)は、その名前のようにオランウータンの森に」とばっさり。開発していたのは中国不動産大手「碧桂園」で、以後、経営がふらついている。


 ▼「海のシルクロード」はどうなるのか?

中国が進めた「一帯一路」には、「海のシルクロード」と砂漠を通る陸のシルクロード、そして北極園を砕氷船で航路を開く北極圏ルートがある。だから世界の80ヶ国近くが関与する。

プロジェクトの中断、挫折、計画縮小はマレーシアばかりではない。
インドネシアの新幹線は工事遅延のまま、完成は絶望的となっている。日本のプロジェクトだったものを中国が横合いから奪って応札し、JRは立腹したものだったが、いまとなっては?
 カンボジアのシアヌークビルは港湾建設が謳われたものの、影も形もなく、進出したのは重慶マフィアとカジノホテル。治安が急激に悪化した。
 フィリピンは新都心マカティがカジノホテルを許可したばかりに、やってきた中国人が合計40万人。清潔なビジネスタウンは俗化してしまった。
 
 スリランカはコロンボ沖合に巨大人工島を建設し、ここは南アジアの金融センターという触れ込みだった。人口島の埋立工事がまもなく終了するが、進出を約束した中国のデベロッパーは社債の債務不履行が続く。
 モルディブは中国依存の政権が転覆した。モルディブはGDPを越える30億ドル近い借金をかかえ、インドが債務保証に乗り出して中国進出に楔を打った。

 ミャンマーでは北西部の要衝=チャゥッピューに近代港湾を造成し、付近の農村を巨大工業団地とするプロジェクトが進むことでスーチー政権と合意に達した。
2020年1月に習近平はわざわざミャンマーを訪問し、工事の本格化をぶち挙げたが、現場では建設事務所が建っているだけ。この場所は雲南省へいたるガスパイプラインの起点である。

 アジアに限らず、ベネズエラへは420億ドルの石油鉱区開発投資、ニカラグアには運河を造るとして工事着工直後に中止。パキスタンは620億ドルの港湾、鉄道、高速道路、光ファイバー網という「中国パキスタン経済回廊」は、パイプラインだけ完成。鉄道は途中の区間で工事が中断している。

 世界中で、中国のプロジェクトは、かように挫折し、残るのは借金のやま。一帯一路を受け入れた国々の多くは中国への借金を返済できないためIMFに救済を求める仕儀となった。
 ♪「夢は儚く消えて」、カネはどこかへ去りぬ。


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