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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和2年(2020)5月29日(金曜日)
通巻第6515号
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全人代最終日。香港国家安全条例をあっさりと採択
米国「約束された自治が維持されていない。特別措置を剥奪する」
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5月28日、全人代最終日。世界中が注目したのは「香港国家安全条例」である。
事実上の治安維持法。日本のメディアは「香港安全法」「安全法制」とまちまちの訳語を当てている。
ともかく香港国家安全条例は、あっさりと採択された。賛成2878、反対1。棄権は6、無効票が1。
香港基本法23条は、分裂や政権転覆の動きを禁じる法律を「香港政府が自ら制定しなければならない」としているため、追加条例というかたちとなる。
これによって香港の高度の自治と自由は大幅に制限される。香港の知識人や若者は反対を表明してデモ、集会を連続開催してきたが、さしあたって6月4日、天安門事件33周年の追悼イベントは荒れるだろう。
直前の5月27日、ポンペオ米国務長官、「香港では中国政府が約束した自治が維持されていない」として、従来供与してきた特別措置を剥奪する」とした。国際金融センターとしての香港に対して、米国は特権的な地位を与えてきた。
昨年十一月にトランプ大統領が署名し成立した「香港人権民主法」では、「香港の高度な自治が維持されない場合、中国は義務を履行していないとして、特権を剥奪できる」と定義している。
ポンペオ長官は米議会に、「道義が理解できる人なら、現状を認識して香港が中国からの高度な自治を維持しているとは断言できない」と指摘した。
同日、米国におけるコロナ死者が十万人を越えた。チャイナ・バッシングの声が一際高くなる。
中国はただちに反応し、趙立堅・外交部報道官は「われわれはいかなる外国の干渉も受け入れない。外部勢力が香港に干渉する間違った行動を取れば、対抗措置を取って反撃する。これは中国の内政問題だ」と強調した。
▲IMFは中国の2020年のGDP成長を1・5%と予測しているが。。。
さて全人代の目玉、じつはほかに二つの大きな論点がある。
第一はGDP成長率の目標値が明示されなかったこと。第一四半期はマイナス6・8%と報告され、IMFは通年で中国の経済成長は1・5%になるだろうとした。
雇用がとくに懸念され、李克強首相は最終日の記者会見で「9億の労働者人口、雇用を守り、雇用機会を想像する」とした。
第二が関連して景気刺激策を遂行するための財政措置である。
リーマンショック以来の4兆元を予備費以外に追加するとし、くわえて地方政府の特別債の発行枠を1兆元とした。金利低下、融資拡大など主に企業支援の政策であり、新しい債務合計は邦貨換算で82兆5000億円となる。
これは中国GDPの4・1%に相当する。
他方、自由が締め付けられ、國際金融センターのポジションを失うことになる香港で何が起きているか?
香港国家安全条例が話題となった前後から、富裕層の香港からの資産逃亡がまたも本格化した。これまでは香港の口座を利用しての送金、取引、企業買収なども目的だったが、およそ5000億ドルと見積もられる富裕層の香港預金が、米国を避けて、シンガポ−ル、ロンドン、スイスへ向かっている(サウスチャイナモーニングポスト、5月29日)
これは自らが國際金融センターの地位を破壊する行為とも取れる。
富裕層は全人代で打ち出された香港の治安維持強化という方向に、賛同を示しつつも、ホンネでは不安視し、大切な資産は、もっと安全な場所へ移管しておこうという強迫観念のもと、走り出したのだ。
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