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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
令和元年(2019)11月17日(日曜日)
通巻第6278号
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エルドアン訪米、トランプは「大ファンだ」と持ち上げた
米国トルコ関係の改善は展望なし、お互いの不信感はぬぐえず
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米国とトルコ関係は緊張している。ほくそ笑むのはロシアのプーチンだ。
そんなおりの11月13日、エルドアン大統領が訪米し、ホワイトハウスで長時間の会談をこなしたうえ、笑顔で共同会見に臨んだ。エルドアンは長身で、メラニア夫人より背が高く、トランプと並んでも引けを取らない。
「政権は歓迎したが、エルドアンは専制政治。民主主義的ではない」と冷ややかな議会は肘鉄を食らわせた」(イスラエルの『ハーレツ』紙、14日)。
会談後の共同記者会見でトランプはエルドアンを指して、「大ファンだ」と高く持ち上げたが、米国とトルコの関係改善は見られず、お互いの不信感はぬぐえずに終わった。
米国の不満は第一にエルドアンが米国の強い反対にもかかわらずロシアのS400ミサイル防衛システムを導入したからである。これには共同防衛体制を敷くNATO諸国も反発した。
米国はイラク戦争やシリア空爆などでNATOメンバーでもあるトルコに軍事基地を置いている。
怒り心頭のトランプはF35ジェット戦闘機のトルコへの供与を中断した。NATOの重要な一員であるトルコが、共通の防衛システムに距離を置いたことは、今後の欧州全体の安全保障に悪影響が出る。
NATO海軍の本拠はトルコのイズミールに置かれている。
第二にクルド族への弾圧を強めるエルドアンに、米国は強い懸念を表明している。
もともとシリア南部のクルド人自治区に盤踞する武装勢力はトルコの頭痛の種であり、米軍の撤退を機にトルコはクルド仁居住区を空爆した。
シリア内戦で米国はクルド武装勢力を励まし、武器供与をつづけてきたから、クルドから見れば、米国の撤退は約束の裏切りと映る。トランプはトルコの鵺的な軍事行動に慌てて米軍撤退を延期した。
第三がトルコ国内におけるウィグル人、ウズベク人へトルコ政府は方針を変えて、北京に協力的となり、彼らへの監視強化に転じたことである。
とくにウィグル人にとってトルコは最後の避難所だった。トルコ人はトルクメニスタン、ウズベク、カザフスタン、キルギス、そして東トルキスタンといわれるウィグル人とおなじチュルク系民族であり、言語体系も同じチュルク系語族だ。だから同胞意識から、避難してくるウィグル人を保護してきたのだ。
▲中国は札束でアンカラ政府の頬を撫でた
そのトルコが、嘗ては中国共産党を「人類の恥」とまで非難していたことをすっかり忘れて、中国からの投資の魅力に勝てず、経済優先に踏み切り、中国政府の要求に応じて国内に避難しているウィグル人への監視を強化したばかりか、一部を中国へ強制送還し始めたのである。
トルコ国内には35000名の亡命ウィグル人が棲み着き、コミュニティではウィグル語の新聞も発行されている。
このコミュニティの分断をはかるため多くの中国公安が這入り込み、活動家にウィグルにいる家族を迫害すると脅し、スパイになれと強要し、言うことを聞かないならトルコ政府に言いつけて強制送還をさせると露骨な脅迫を始めた。
ウィグル独立を願う人々にとってトルコも安住の地ではなくなった。
米国に亡命したラビア・カディール女史は「世界ウィグル会議」を主宰し、平和的解決を世界世論に訴え続ける。
ワシントンにはほかに「東トルキスタン独立政府」が存在している。実際に1940年代から50年代初頭、東トルキスタンは独立していた。
「東トルキスタン独立」を主張するウィグル人組織はミュンヘンにもあり、親中派メルケル政権の膝元で、活動を続けている。
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香港の次はウイグル・トランプ氏&G7の次の戦略。邪魔するエルドアン。
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