「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
令和元年(2019)7月3日(水曜日)
通巻第6126号
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米国、バロチスタン解放軍を「テロリスト」と認定へ
中国の「借金の罠」を念頭にしながらも、中国の見解に同調
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7月2日、米国務省はバロチスタン解放軍を「テロリスト」と認定した。
パロチスタンはパキスタンの西部地方に位置し、州都はクエッタ。
その国土面積は広いが、人口はパキスタン全体の5%、タリバンやアルカィーダの秘密出撃基地としても活用され、また西にイランをひかえる交通の要衝として中世からシルクロード中継地として栄えた。
最西端のグアダールや州都のクエッタにおける中国人襲撃ばかりか、バロチスタン解放軍とそのシンパはバザールに爆弾をしかける無差別テロを展開した。
2018年11月にはカラチの中国領事館を自爆テロの攻撃目標とした。2019年5月にはグアダールの最高級ホテルを襲撃し、五名を殺害した。
そもそもバロチスタンで中国人を攻撃するテロ活動は、中国の推進するCPEC(中国パキスタン経済回廊)が攻撃目標である。
石油、ガスパイプライン、鉄道、ハイウェイ、そして光ファイバー網の建設が進むが、バロチスタン現地にはなんら裨益せず、労働者の雇用もほとんどなく、中国から労働者ならびにコックまで連れてきたため、かれらから見れば「中国は侵略者」となる。
中国は「一帯一路」の目玉にグアダール港の近代化をすすめ、パキスタン政府が借金を支払えないとみるやグアダール港の43年間の租借を認めさせた。
これらすべてがバロチスタン州のあずかり知らぬところで行われてきたことに不満を爆発させたのである。もともバロチスタンは独立国で、英国が無理矢理にパキスタンに編入させた歴史的経緯もある。
とはいえ、米国が中国の主張に同調するかのようにバロチスタン解放軍をテロリストと認定したことにより、かれらへの弾圧が合法化される。
そのネットワークや、背後のスポンサーなどの情報を米国はパキススタンに提供することになるか、これまでにも米国はパキスタン軍情報部への不信感があり、協力体制を組むかどうかは定かではないものの、北京としては米国の決定にほくそ笑んだことだろう。
米国は2001年9月11日にNYの貿易センター爆破テロに衝撃を受け、対テロ戦争に中国の協力が必要という文脈から「東トルキスタン解放軍」をテロリストと認めた。
これによって中国はウィグル人への弾圧の正当性を主張してきた経緯を振り返ると、今回の措置も同様な結末を招くのではないか。
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