「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
令和元年(2019)5月29日(水曜日)
通巻第6091号
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中国人留学生の人気トップは英国、米国は二位に転落したが
「2025 MADE IN CHINA」に激怒したトランプ大統領
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「中国人とみたらスパイと思え」と私的な集まりでトランプ大統領が発言したという。そこまでトランプを激怒させたのは、米国企業からハイテク技術を盗み出したばかりか、大学の共同研究のデータから、研究員の個人的ファイルまで盗んで、どの学生がどの分野に強いか等、将来のハンティングの可能性も、中国人留学生らが調べていた事実が露呈したからだった。
張首晟教授は「将来のノーベル物理学賞が確実」とまで言われた天才学者だった。同時に彼は、中国共産党がダミーで設立した財団の責任者としても、スタンフォード大学などで、金の卵となる学者に接触したりして、中国への就労、ハンティングをしていた(小誌、2018年12月14日、第5916号)。
とくに2018年12月1日に自殺してスタンフォード大学教授の張首晟の衝撃的事件により、在米中国人留学生の間には恐怖心が走った。
「このまま米国にいたら逮捕されるのではないか?」という不安心理である。誰もが身に覚えがあるからで、直後からおよそ4000名の中国人の学者高官、大学院生、企業研修生などが急遽帰国の途に就いた。
加えて、それまで過保護とも言えるほどの厚遇されてきた海亀組(海外から専門知識、技術を持って中国に帰国した一群の人々)も、就職が困難となっていた。
さらにオバマ政権下の対中大甘政策によって留学生に認めてきた五年有効のヴィザを、トランプ政権は「一年ごとの更新」に切り替えたため、いずこの大学キャンパスに溢れかえっていた中国人留学生の数が激減した。
中国人の若者のあいだで、つねにトップだった米国。昨年から留学先人気で、米国がトップから二位に転落し、英国にとってかわられた(『サウスチャイナ・モーニングポスト』、5月28日)。
ちなみに実績でも英国が20・14%(五人にひとり)、二位となって米国は17・45%、これに次ぐのが、豪、カナダ、ドイツ、仏蘭西、香港、日本、韓国という順番になる。
米国から英国へのシフトは、英国が米国ほどに留学生に厳しくなく、また投資も、企業買収も可能であり、なんといってもファーウェイ制裁への協力を求める米国とは、大きく温度差を示したわけだから、留学先は英国だという安心心理理も手伝った。
これまで中国人留学生全体の、じつに三分の一にあたる262241名が米国に留学していた。
米国の大学への留学激減は第一に米中貿易戦争の所為だ。
第二に、人民元の下落によって、海外への送金額が目減りし、このままではやっていけないと両親が判断したからだろう。
ドイツとフランスへの留学は堅実かつ安定的だが、それは米国と距離をおき、ファーウェイ排斥を微温的にしか展開していないからである。
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