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[FT]メイ英首相、辞めても深まる大混乱
英EU離脱 ギデオン・ラックマン ヨーロッパ 北米 FT FT commentators
2019/4/12 2:00
日本経済新聞 電子版
英国人は一体全体どうしてしまったのか――。欧州のみならず世界中が、安定と節度で知られる英国が自らを引き裂きそうな状況を困惑しながら見つめている。
James Furguson/Financial Times
多くの人は、どこかで英国のプラグマティズム(実用主義)が復活すると考えている。しかし、悪い知らせがある。英国は、向こう数年でさらに不安定で予測不能な国になる確率のほうが高い。その不安定さは、他の欧州諸国や西側同盟、リベラルな今の国際秩序にとって不穏な事態を引き起こすことになるだろう。
首相として指導力を発揮できなかった面はあるが、メイ英首相は過激な人物ではない。英国の欧州連合(EU)離脱を巡る交渉では、既存の国際秩序に沿った形で、英国の外交政策に欠くべからざる要素をほぼ維持できる離脱を実現しようとした。
だが、メイ氏は早晩退任することになる。そして次の首相は英国を劇的に異なる方向へ導く可能性がある。特に、メイ氏の後継となる公算が最も大きい2人が、ブックメーカー(賭け屋)が次期保守党党首の本命としているボリス・ジョンソン氏と、労働党を率いるジェレミー・コービン党首だからだ。
■保守党政権なら親トランプ氏は確実
ジョンソン氏や彼と似た考えを持つ強硬なEU離脱派が率いる保守党が政権を握った場合、英国はトランプ米政権と相当緊密に連携していくようになるだろう。メイ氏は気候変動やイラン、イスラエル、貿易などを巡る問題では、EUと歩調を合わせて米国と対峙したが、ジョンソン氏が率いる政府はほぼ間違いなく米国の味方につく。
これは重要なポイントだ。なぜならトランプ氏率いる現政権は、EUに対して史上初めて敵対的な姿勢を取った米政権だからだ。ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が書いた文章を読んだ人なら、同氏がEUに対して敵意と疑念を抱いていることは誰でも知っている。ボルトン氏は、国際法を通して各国が協力するというイデオロギーは、米国の覇権と主権の脅威になると考えており、EUをその代表例とみなしている。
ボルトン氏をはじめとするトランプ政権の高官たちが、「合意なき離脱」を露骨に後押ししているのは、このためだ。EU離脱後、英国に必要な手助けは何でもするとしたボルトン氏の約束には含みがある。この"手助け"には、英離脱に伴う様々な混乱に乗じて、米国がEUから輸入する車に25%の関税をかけるというトランプ氏の脅しを実行に移し、欧州の混乱に拍車をかけることも含むかもしれない(その場合、英国はEUから離脱していたら対象外となることもあり得る)。
■労働党政権なら親ロシアになる可能性も
もしコービン氏が次の英政府を率いることになれば、英国はワシントンよりも、むしろモスクワに目を向けるかもしれない。コービン氏はそのキャリアを通して、ロシアやキューバ、ベネズエラといったロシアの同盟国に共感を抱いてきた。強烈な平和主義者で、北大西洋条約機構(NATO)を長年批判してきた人物でもある。
コービン流の外交政策では、西側の安全保障体制から英国が事実上撤退するほか、制裁を解除してロシアとの関係正常化に動く可能性もある。エストニアから英国軍を引き揚げ、シリア国内におけるロシアの地位を是認することも考えられる。
英国がトランプ政権と足並みをそろえ、ましてやプーチン大統領率いるロシアと接近するようなことには、英国の世論と議会が阻止するに違いないと反論する人もいるだろう。しかし、世論や議会をあてにはできないだろう。
ジョンソン氏やコービン氏のような指導者の台頭は、穏健な中道派が投票する人がいない状況を作り出している、英国政治が二極化しつつある兆候だ。英国にとってEU離脱に向けたプロセスは屈辱的なものだ。屈辱は、その国民や国家を奇妙な方向へ導くことがある(冷戦に負けたロシアをみれば分かるだろう)。
■かつての英米露同盟さえ復活の可能性
欧州統合推進に反対の英国人の多くは、第2次大戦という英国「最良の時」に郷愁を感じている。そのことを考えると、EU離脱派が、ドイツを軸とした大陸欧州連合を相手に回して米国あるいはロシアと組み、戦時中の国際的構図を再現しようとしたとしても意外ではない。
欧州統合が進む中、大陸欧州の周縁に位置する元帝国として英国とロシアは、欧州のメンバーになることに違和感を覚えてきた(トルコも恐らく同じ問題を抱えている)。ロシアと英国は常に一致団結した大陸欧州の力を脅威に感じてきたし、第1次大戦、第2次大戦、ナポレオン戦争では同盟関係にあった。
英国のEU離脱で、こうした歴史的な地政学的同盟関係が復活するかもしれないという見方はおぞましく、ありそうもないことだと思うかもしれない。特に今、ロシア政府と英政府の関係が極めて悪化しており、米大統領選への介入でロシアへの疑念が深まっていることを考えるとなおさらだ。
だが何度も指摘されているように、トランプ氏はなぜかプーチン氏を気に入っている。そのためトランプ氏は、モラー特別検察官が3月に提出した調査報告書によって、16年の米大統領選でロシアと共謀したのではないかとの疑いについて自分の潔白が証明されたと思っているだけに、プーチン氏とは大手を振って仲良くできると考えている可能性がある。EUを共に敵視していることも手伝いトランプ氏とプーチン氏の関係が改善すれば、EU離脱後の英国にも影響が及ぶかもしれない。
■もはや後戻りできない英国
では、こうした暗いシナリオは、今の離脱交渉にどんな影響をもたらすのだろうか。
ざっくり言えば、これらのシナリオはEUとリベラル派の英国人に、離脱期限の長期延長を求めるよう促すはずだ。長期延長は、穏健な離脱か離脱そのものの取り消しへ至る道筋になるかもしれない。これが、英国とEUファミリーの緊密な関係を維持する可能性が最も高い戦略だ。将来の英・EU関係の枠組みを築くことで急進的なコービン氏やジョンソン氏を抑制することにもなる(編集注、EUは11日未明、EU臨時首脳会議で英国の離脱期限を10月31日まで再延期することを決めた)。
だが、前述してきたことを阻止できる保証はない。英国は既にかなり過激な方向に進んでしまっているし、そのために二極化も顕著だ。今から後戻りするのは難しいだろう。
By Gideon Rachman
(2019年4月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)
(c) The Financial Times Limited 2019. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
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● 宇宙誕生以来、時間は一方向に進むのみです。言い換えれば、過去には
戻れないのです。同時に宇宙の歴史のすべて波動・サイクルを秘めて
いる以上、過去に似た状況を繰り返すこともまた真実です。
● しかし新しい時代は、過去にはない味付けが必要です。英国での味付けは
どうなるのでしょう。右派独裁型か?又は左派独裁型か?遠交近攻?
やがて徐々にその姿は見えてくるでしょう。
● ただハッキリといえることは、直近の過去には絶対戻らない・言い換えれば
EUの一員になることは最早ないという事です。世界戦国時代は
各国が(USA/大西洋資本主義諸国を中心に)内戦状態になり
● 群雄割拠した各国の勢力が、その優劣をかけて、潰しあい・殺し合いを
行う時期です。他人のことを・他国のことをかまっている暇は
ないのです。昨日の友は明日の敵です。
● 歴史の後退の時期です。一歩前進二歩後退。歴史経済波動学。
[FT]メイ英首相、辞めても深まる大混乱
英EU離脱 ギデオン・ラックマン ヨーロッパ 北米 FT FT commentators
2019/4/12 2:00
日本経済新聞 電子版
英国人は一体全体どうしてしまったのか――。欧州のみならず世界中が、安定と節度で知られる英国が自らを引き裂きそうな状況を困惑しながら見つめている。
James Furguson/Financial Times
多くの人は、どこかで英国のプラグマティズム(実用主義)が復活すると考えている。しかし、悪い知らせがある。英国は、向こう数年でさらに不安定で予測不能な国になる確率のほうが高い。その不安定さは、他の欧州諸国や西側同盟、リベラルな今の国際秩序にとって不穏な事態を引き起こすことになるだろう。
首相として指導力を発揮できなかった面はあるが、メイ英首相は過激な人物ではない。英国の欧州連合(EU)離脱を巡る交渉では、既存の国際秩序に沿った形で、英国の外交政策に欠くべからざる要素をほぼ維持できる離脱を実現しようとした。
だが、メイ氏は早晩退任することになる。そして次の首相は英国を劇的に異なる方向へ導く可能性がある。特に、メイ氏の後継となる公算が最も大きい2人が、ブックメーカー(賭け屋)が次期保守党党首の本命としているボリス・ジョンソン氏と、労働党を率いるジェレミー・コービン党首だからだ。
■保守党政権なら親トランプ氏は確実
ジョンソン氏や彼と似た考えを持つ強硬なEU離脱派が率いる保守党が政権を握った場合、英国はトランプ米政権と相当緊密に連携していくようになるだろう。メイ氏は気候変動やイラン、イスラエル、貿易などを巡る問題では、EUと歩調を合わせて米国と対峙したが、ジョンソン氏が率いる政府はほぼ間違いなく米国の味方につく。
これは重要なポイントだ。なぜならトランプ氏率いる現政権は、EUに対して史上初めて敵対的な姿勢を取った米政権だからだ。ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が書いた文章を読んだ人なら、同氏がEUに対して敵意と疑念を抱いていることは誰でも知っている。ボルトン氏は、国際法を通して各国が協力するというイデオロギーは、米国の覇権と主権の脅威になると考えており、EUをその代表例とみなしている。
ボルトン氏をはじめとするトランプ政権の高官たちが、「合意なき離脱」を露骨に後押ししているのは、このためだ。EU離脱後、英国に必要な手助けは何でもするとしたボルトン氏の約束には含みがある。この"手助け"には、英離脱に伴う様々な混乱に乗じて、米国がEUから輸入する車に25%の関税をかけるというトランプ氏の脅しを実行に移し、欧州の混乱に拍車をかけることも含むかもしれない(その場合、英国はEUから離脱していたら対象外となることもあり得る)。
■労働党政権なら親ロシアになる可能性も
もしコービン氏が次の英政府を率いることになれば、英国はワシントンよりも、むしろモスクワに目を向けるかもしれない。コービン氏はそのキャリアを通して、ロシアやキューバ、ベネズエラといったロシアの同盟国に共感を抱いてきた。強烈な平和主義者で、北大西洋条約機構(NATO)を長年批判してきた人物でもある。
コービン流の外交政策では、西側の安全保障体制から英国が事実上撤退するほか、制裁を解除してロシアとの関係正常化に動く可能性もある。エストニアから英国軍を引き揚げ、シリア国内におけるロシアの地位を是認することも考えられる。
英国がトランプ政権と足並みをそろえ、ましてやプーチン大統領率いるロシアと接近するようなことには、英国の世論と議会が阻止するに違いないと反論する人もいるだろう。しかし、世論や議会をあてにはできないだろう。
ジョンソン氏やコービン氏のような指導者の台頭は、穏健な中道派が投票する人がいない状況を作り出している、英国政治が二極化しつつある兆候だ。英国にとってEU離脱に向けたプロセスは屈辱的なものだ。屈辱は、その国民や国家を奇妙な方向へ導くことがある(冷戦に負けたロシアをみれば分かるだろう)。
■かつての英米露同盟さえ復活の可能性
欧州統合推進に反対の英国人の多くは、第2次大戦という英国「最良の時」に郷愁を感じている。そのことを考えると、EU離脱派が、ドイツを軸とした大陸欧州連合を相手に回して米国あるいはロシアと組み、戦時中の国際的構図を再現しようとしたとしても意外ではない。
欧州統合が進む中、大陸欧州の周縁に位置する元帝国として英国とロシアは、欧州のメンバーになることに違和感を覚えてきた(トルコも恐らく同じ問題を抱えている)。ロシアと英国は常に一致団結した大陸欧州の力を脅威に感じてきたし、第1次大戦、第2次大戦、ナポレオン戦争では同盟関係にあった。
英国のEU離脱で、こうした歴史的な地政学的同盟関係が復活するかもしれないという見方はおぞましく、ありそうもないことだと思うかもしれない。特に今、ロシア政府と英政府の関係が極めて悪化しており、米大統領選への介入でロシアへの疑念が深まっていることを考えるとなおさらだ。
だが何度も指摘されているように、トランプ氏はなぜかプーチン氏を気に入っている。そのためトランプ氏は、モラー特別検察官が3月に提出した調査報告書によって、16年の米大統領選でロシアと共謀したのではないかとの疑いについて自分の潔白が証明されたと思っているだけに、プーチン氏とは大手を振って仲良くできると考えている可能性がある。EUを共に敵視していることも手伝いトランプ氏とプーチン氏の関係が改善すれば、EU離脱後の英国にも影響が及ぶかもしれない。
■もはや後戻りできない英国
では、こうした暗いシナリオは、今の離脱交渉にどんな影響をもたらすのだろうか。
ざっくり言えば、これらのシナリオはEUとリベラル派の英国人に、離脱期限の長期延長を求めるよう促すはずだ。長期延長は、穏健な離脱か離脱そのものの取り消しへ至る道筋になるかもしれない。これが、英国とEUファミリーの緊密な関係を維持する可能性が最も高い戦略だ。将来の英・EU関係の枠組みを築くことで急進的なコービン氏やジョンソン氏を抑制することにもなる(編集注、EUは11日未明、EU臨時首脳会議で英国の離脱期限を10月31日まで再延期することを決めた)。
だが、前述してきたことを阻止できる保証はない。英国は既にかなり過激な方向に進んでしまっているし、そのために二極化も顕著だ。今から後戻りするのは難しいだろう。
By Gideon Rachman
(2019年4月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)
(c) The Financial Times Limited 2019. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
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● 宇宙誕生以来、時間は一方向に進むのみです。言い換えれば、過去には
戻れないのです。同時に宇宙の歴史のすべて波動・サイクルを秘めて
いる以上、過去に似た状況を繰り返すこともまた真実です。
● しかし新しい時代は、過去にはない味付けが必要です。英国での味付けは
どうなるのでしょう。右派独裁型か?又は左派独裁型か?遠交近攻?
やがて徐々にその姿は見えてくるでしょう。
● ただハッキリといえることは、直近の過去には絶対戻らない・言い換えれば
EUの一員になることは最早ないという事です。世界戦国時代は
各国が(USA/大西洋資本主義諸国を中心に)内戦状態になり
● 群雄割拠した各国の勢力が、その優劣をかけて、潰しあい・殺し合いを
行う時期です。他人のことを・他国のことをかまっている暇は
ないのです。昨日の友は明日の敵です。
● 歴史の後退の時期です。一歩前進二歩後退。歴史経済波動学。