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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)9月29日(金曜日)弐
通巻第5453号
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あのティラーソンの影もクルドの石油利権交渉の過程でちらついていた
ロシアが突如、クルド支援に立ち上がったが、その背景は?
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9月25日の住民投票で「クルド族自治区」の(イラクからの)「独立」に、住民の93%弱が賛成した。米国は投票そのものが「挑発的であり、破壊的であり、地域の安定を損なう」と反対していたが、イスラエルは、「賛成と出れば直ちにクルディスタン独立を支持する」と表明していた。
ロシアもラブロフ外相が「投票は合法的である」と述べた。
結果は予想されたように独立賛成とでたが、途端に周辺国からブーイングがおこる。
イラクはもとより、クルド族を大量の国内に抱えるイランとトルコの非難合唱。イランは国際線の乗入りを止め、イラクは空港の返還を迫り、トルコはクルドから輸出されるパイプラインのトルコ通過ルートを締め上げ、クルド経済は痲痺する。
ちなみにクルド自治区には三つの国際空港があり、大都市はエルビル(アルビールとも発音)で140万人、第二の都市はスレーマニアで96万人。第三はキルクークで85万人。但し、キルクークはクルド自治区の域外で、イラクと揉めている。
実態としてクルド経済は、あのベネズエラ同様に原油依存体質、将来の開発利権を担保に諸外国から借金を繰り返してきたため、現時点での対外負債は200億ドルと推定される。内陸部のため、輸出はパイプラインに依拠せざるを得ない。
クルド自治区には、石油埋蔵が450億バーレル、ガスは5・6兆立方メートルあるとされており、サダム・フセイン体制の崩壊後、この資源開発をめぐっての利権争奪戦が、列強メジャーの間に繰り広げられてきた。
数年前には米国も触手を動かし、エクソン・モービルが進出した。
石油鉱区の開発工事に着工したが、設備としては小規模のもので、その後、ほかの企業に売却している。
そのときのエクソン・モービルのCEOはティラーソンだった。いまの国務長官である。
▲ロシアがなぜ、クルド族自治区問題にしゃしゃりでてきたのか?
もっとも強い関心を持ったのは、ロシアだった。ロフネフツは、すでに2億8000万ドルを投じて原油採掘離区をおさえ、実際にはトルコ経由のパイプラインで輸出している。さらにロフネフツはクルド経済の窮状をみて、将来の採掘分の先払いとして10億ドルを支払うという破格の交渉を進めている(イスラエル英字紙「ハーレツ」、2017年9月29日)。
ロシアが、こういう事態になると、ひょいと顔を出すのは、いまの北朝鮮への政治的介入と同じで、主要なプレイヤーとして、国際政治の主役を演じたいからで、経済的コスト度外視しての支援をおこなうのは歴史的な体質でもある。
独立反対の急先鋒であるトルコも、クルドとは共同開発事業を展開しており、トルコの投資額は20億ドルと報じられている。
問題は腐敗と汚職にまみれたクルドの政治実態である。
バルザニ「大統領」は2013年に期限が切れたのに、「大統領職」に居座っている。その合法性を問わず、大統領選挙を行なうのならともかくも、さきに独立か否かの住民投票を行った。
「首都」エルビルは近隣諸国とハイウェイが繋がり、車に溢れ、道路は整備されつつあり、ビル建築ラッシュに湧いた。
「第二のドバイ」になると建築ブームが起きたのは、原油代金が1バーレル=100ドルに迫った時だった。
これらの利権をバルザニ大統領一族が抑えている。つまり、この構造はトルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタンなどと変わらない。
資源しか売り物が無く、外国資本の開発に依存せざるを得ないという独裁国家ならば、ジンバブエに似ている。
先行きに「希望」がないのは、どこかの国の選挙に似ている。
□◇□み△□◇や□▽◎ざ□◇□き◎□◇
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● 何時も書いているように,ここでのキーワードは知恵者賢帝の時代です。
資本主義的原理主義だけでは、世界の政治経済を分析する事は
出来ないのです。
● 経済歴史波動学の目で見る事も必要になります。勿論日本人は資本主義的
法治国家の思想でみますから、どうしてもバイアスがかかるのです。